つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

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低髄液圧症候群で起立性頭痛が起こる理由

低髄液圧症候群で起立性頭痛が起こる理由 低髄液圧症候群は起立性の頭痛の増悪と臥位による頭痛の改善という特徴的な臨床症状を示す症候群である。低髄液圧となる原因としては腰椎穿刺後、外傷による髄液濾出、その他原因不明の特発性などがある。 脳脊髄液…

拡散強調像高信号(ADC低信号)の鑑別

拡散強調像高信号(ADC低信号)の鑑別 拡散強調で高信号(ADCで低信号)となるのは水分子の拡散制限がある状態。 脳梗塞超急性期などが代表的な例であるが、病態としては大きく分けて3通りある。 1,細胞性浮腫 2,粘稠度増加 3,細胞密度増加 1,細胞…

生理食塩水大量輸液がしにくい理由

生理食塩水大量輸液がしにくい理由 ◯救急外来ではとりあえず細胞外液が投与されることが多い 救急外来などで点滴をつなぐ場合は、"とりあえず"細胞外液である生理食塩水や酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液が投与されることが多い。これらは細胞外液量が減って…

蕁麻疹患者には「魚を食べましたか?」と聞く理由

◯魚には大量のヒスタミンが含まれていることが サバなど魚を食べた後にアレルギー症状様の中毒症状が起こることがある。食後30分〜1時間後に蕁麻疹症状や腹痛、嘔気、下痢などが出現し、一見アレルギーと思われるが、実は魚の中に含まれているヒスタミン…

救急外来でまず何の輸液を選択するか

救急外来でまず何の輸液を選択するか ◯病態もはっきりしないのまま輸液をつなぐことになる救急外来 救急外来では患者の病名も病態もはっきりとしない段階で輸液しなければならないことも少なくない。が、明らかに有害であることを示す所見がない限り、循環血…

気腫性膀胱炎とは何か

◯気腫性膀胱炎とは 気腫性膀胱炎とは大腸菌やクレブシエラ菌などガス産生菌が膀胱壁内にガス産生を行う膀胱炎であり、通常の膀胱炎よりも予後が悪い。若年女性などでは起こりにくく、コントロール不良の糖尿病患者や神経因性膀胱、尿道閉鎖などに好発する。…

膝蓋跳動の方法と意義

膝蓋跳動とは関節水腫(関節に液体が貯留しているかどうか)を判定するための診察方法。関節液が貯まると膝蓋骨が跳ぶように動くことに由来。 ●関節液はどこにあるか 膝蓋骨周囲の解剖学的な断面図。膝蓋骨周囲に水が溜まっている様子↓@水色の部分。 関節液…

呼吸性アルカローシスの鑑別

呼吸性アルカローシスは換気量が増えてCO2が生理的な範囲を超えて体外に出ていくことで起こる。 呼吸性アルカローシスの原因 1,低酸素血症(PaO2<60Torrなど低酸素血症の状態では呼吸刺激による換気量増加が起こり、血液中の酸素濃度を高めようとする。そ…

横紋筋融解症に出会ったら

横紋筋融解症とは骨格筋の破壊によって筋肉成分が血管に流出することによりミオグロビンによる腎障害や電解質異常が起こる病態。 ◯横紋筋融解症の原因 ・直接的な筋障害(外傷、クラッシュ症候群、過度な運動、痙攣、熱中症、脱水) ・薬剤性(スタチン、フ…

嘔吐でアルカローシス、下痢でアシドーシスになる理由

◯嘔吐でアルカローシスになる理由 消化管の細胞では CO2+H2O → H+ + HCO3-という反応が起こっている。 胃ではH+とHCO3-のうち、H+は胃酸として消化管腔内に分泌され、HCO3-は血液中に入る。よって、嘔吐すると、H+だけが体外にでていき、HCO3-は体内に残…

敗血症性ショックではドパミンではなくノルアドレナリンを使う理由

敗血症性ショックの初期治療としては1000〜2000mlの輸液負荷を行うと同時にそれでも改善しない場合は昇圧薬としてノルアドレナリンやドパミンが頻用される。 どちらもαアドレナリン受容体を刺激することによって血管収縮作用を示す。 ドパミンに関してはβ受…

ARDSの診断基準

ARDSは肺炎などの感染症や重症外傷などによって高サイトカイン血症が生じることで血管透過性亢進によって引き起こされる肺水腫、高度の低酸素血症である。急激に進行する呼吸困難、胸部レントゲンで両側肺野全体のびまん性浸潤を呈することが多いとされる。 …

脳梗塞時に共同偏視があれば脳主幹動脈病変を示唆する

脳梗塞時に共同偏視があれば脳主幹動脈病変を示唆する ◯共同偏視の存在が意味するもの 共同偏視があるということは、「偏視している側の大脳」もしくは「偏視している側の逆の脳幹」に障害が起きているということを意味する。大脳の障害の原因としては被殻出…

代謝性アルカローシスの鑑別

血液ガスで代謝性アルカローシスの鑑別 主な原因2つ: 1,嘔吐(またはNGチューブ) 2,利尿薬(ループ利尿薬、チアジド) 3,有効循環血漿量の低下(腎臓へ流入する血液が低下するとeGFR低下とNa+再吸収亢進を介して血漿HCO3-が高値であってもHCO3-の尿…

PPIの使い分け

NSAIDS胃潰瘍やピロリ菌による胃潰瘍あるいは逆流性食道炎などに対してプロトンプンプインヒビター(PPI)が用いられる。ガイドラインではそれぞれのPPIの効果に違いは無いとされており、どれを使っても問題はないがそれぞれの違いについて簡単にまとめ。 オ…

大球性正色素性貧血の鑑別メモ書き

大球性正色素性貧血の鑑別 前提:まずMCV・MCHCとは ・MCV(平均赤血球容積) =赤血球1個の大きさを意味する 基準値81-100fL→80以下で小球性、81ー100で正球性、101以上で大球性 ・MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度) =単位容積赤血球あたりのヘモグロビ…

上部消化管出血らしい所見(下部消化管出血と比べて)

上部消化管出血か下部消化管出血か迷ったら 吐血、下血が主訴の救急患者においてはそれが上部消化管からの出血なのか、下部消化管からの出血なのかの鑑別が重要である。食道静脈瘤破裂や出血性胃潰瘍など上部消化管出血であれば緊急内視鏡で止血しなければ出…

「発熱+後頚部リンパ節腫大」で想起したい菊池病

◯菊池病とは 菊池病は壊死性リンパ節炎と不気味な名前を持つが予後は良好。 前駆症状として扁桃の腫大、上気道症状から始まることが多い。 その後38度前後の不規則な発熱と頸部リンパ節腫大が1ヶ月近く持続する。 日本などアジアに多い病気。1972年に初め…

外傷で肋骨骨折があれば胸部CTもとっておくべき

外傷で肋骨骨折があれば胸部CTもとっておくべき 胸部打撲などの主訴で救急外来を受診されて胸部レントゲン撮影で肋骨骨折を認めた場合、基本的には保存的な治療になる。が、肋骨骨折をするような外傷の場合、胸部レントゲンで気胸が映らなくても実は気胸を起…

気胸の重症度分類

気胸の重症度分類 胸部レントゲンで気胸を見つけたら重症度を評価する。 端的に言うと、 肺尖部が鎖骨より上にあれば軽度虚脱 完全に肺がしぼんでしまっている状態を高度虚脱 軽度虚脱と高度虚脱の間ぐらいのものを中等度虚脱 肺尖部が鎖骨の上か下かが1つ…

バタフライシャドウの見方と意義

バタフライシャドウの見方と意義 参考:リアルバタフライ ◯左心不全で肺うっ血が起こる→バタフライシャドウ(butterfly shadow) 左心不全により左室の拍出量が低下すると左房圧力が上昇→肺静脈圧上昇→肺うっ血がおこる。肺うっ血とは肺の毛細血管圧が上昇し…

溶連菌感染症のWBCやCRPは細菌によって異なるという話

細菌性扁桃炎患者のWBCはいつもとても高いイメージがあったが、調べてみると扁桃炎の中でも溶連菌感染症のときは他の細菌感染に比べて有意に白血球数が上昇するという報告がある模様。CRPに関しても一部の細菌に比べて溶連菌は高いことが示されている。なお…

収縮期血圧で心不全の状態を分類する(クリニカルシナリオ)

急性心不全の予後改善には急性期での治療開始が重要と考えられており、救急外来などで簡易に治療方針をすぐに決定できるように収縮期血圧に着目したクリニカルシナリオというものがある。 もちろん血圧は個人差があるため血圧だけで一概に心不全の病態を判断…

腹頸静脈試験とは何か

腹頸静脈試験(肝頸静脈逆流)とは何か →abdominojugular reflux(AJR) 右心不全の徴候として「頸静脈怒張」がある。頸静脈怒張はベッドを45度に傾けて患者の頸静脈が胸骨角のところから頸静脈拍動の最強点までの垂直での距離が4.5cm以上であれば右心不全を…

起座呼吸と発作性夜間呼吸困難の違い

◯起座呼吸と発作性夜間呼吸困難の違い 起座呼吸は仰臥位になると呼吸困難が出現し、座ると改善することをいう。メカニズムとしては、仰臥位では静脈還流量が増えるため、心不全が増悪して呼吸困難になると考えられている。 起座呼吸は横になるとすぐに苦しく…

心不全急性増悪の原因と頻度

救急に来る心不全増悪疑いの患者で考えること。 とある論文によると心不全の急性増悪原因として多い順番からして次のように報告されている。 ・コンプライアンス不良(食事、薬、活動制限)(47%) ・全身性感染症(20%) ・不整脈(11%) ・身体的…

咽頭・扁桃の白苔は細菌感染を示唆するものではないという話

咽頭や扁桃を観察して白苔の付着があるとウィルス感染ではなく細菌感染を示唆するとしばしば誤解されるが、実際には溶連菌感染症以外にも伝染性単核球症やアデノウィルス、インフルエンザA型などでも白苔の付着は普通に認められる。むしろ、伝染性単核球症で…

指ブロックの方法

◯指ブロックという局所麻酔方法 指の先端などを怪我した患者の縫合を行う際に、指先端に局所麻酔薬を注射しても広がりにくい上に、麻酔薬でむくんで縫合しにくくなる。よって指の根元の神経近くに麻酔薬を打つことで、指全体に麻酔をかける方法として指ブロ…

爪下血腫への対応

爪下血腫への対応 「ドアに指を挟んだ」、「重たいものを指に落とした」、「指を踏まれた」等によって爪下血腫が生じうる。爪下出血とは爪甲と爪床の間の閉鎖空間で出血が起こる状態。少量の出血でも内腔圧力が上昇して強い痛みが生じる。 【爪の解剖の復習…

脳浮腫に漢方五苓散が効く理由

脳梗塞や脳腫瘍あるいは慢性硬膜下血腫など頭蓋内病変によって脳浮腫が起こる。脳浮腫とは文字通り脳細胞がむくんだ状態であるが、脳全体の体積が大きくなりすぎると脳幹を圧迫する脳ヘルニアを引き起こして致死的な状態となりうる。 西洋医学的な治療法とし…