「発熱+後頚部リンパ節腫大」で想起したい菊池病
◯菊池病とは
菊池病は壊死性リンパ節炎と不気味な名前を持つが予後は良好。
前駆症状として扁桃の腫大、上気道症状から始まることが多い。
その後38度前後の不規則な発熱と頸部リンパ節腫大が1ヶ月近く持続する。
日本などアジアに多い病気。1972年に初めて報告された。
若年女性に多い。(患者の8割が若年、8割が女性)
◯主要徴候
リンパ節腫大(100%)、発熱(34.8%)、紅斑(10%)、体重減少など。
リンパ節の大きさは0.5〜4.0cm程度と言われ約半数に圧痛を伴なう。
リンパ節腫大は両側性のことも有るが殆どが9割方片側性。
全身性リンパ節腫大の頻度は1−22%と報告によって差がある。
その他にも関節痛、肝脾腫、腹痛、倦怠感など非特異的な症状も呈しうる。
逆に、「咽頭痛がない」というのが他の疾患の鑑別の上で重要。
◯血液検査の特徴
白血球減少(25−58%)
異型リンパ球上昇(25−31%)
赤沈亢進(18%)
AST・ALT高値(8%)
血清フェリチン上昇
抗核抗体陽性を認めることがあり、SLEとの鑑別が重要となる(もしくはSLEの1症状としてのリンパ節腫大)。 むしろ菊池病を疑われたらその段階で抗核抗体価をチェックしておくことが望ましい。
◯診断・治療
確定診断するにはリンパ節生検をするしかない。
が、放っておいても治る疾患なので初診時にするようなことはない。
むしろ菊池病よりほかの病気がよぎるような時にリンパ節生検をするべき。
例えば、
・40歳以上
・リンパ節のサイズが3cm以上もしくはどんどん増大している時
・鎖骨上のリンパ節腫大が有る時
・4週間以上発熱とリンパ節腫大が持続している時
治療はアセトアミノフェンなどの対症療法。症状が強い場合はプレドニンも考慮されるが、易感染になるので使うのは生検で確定診断してから。
鑑別としてはSLE、悪性リンパ腫、結核性リンパ節炎などが重要となる。
◯予後について
無治療でも1ヶ月程度でほとんどが軽快するが、1割ほどの患者は再発する。
経過のフォローの上で特に重要なのがSLEの合併。アジアでは菊池病の28%がSLEでも有ると言われ、また菊池病はSLEの診断に数年先行して発症することがある。
また追記します。
参考文献
・ジェネラリストのための内科診断リファレンス
・誰も教えてくれなかった風邪のみかた
・卒後10年目総合内科医の診断術