高尿酸血症への対応
日本痛風・核酸代謝学会の診断基準によれば男女を問わず、7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と定義されている。
◯尿酸高値=痛風ではない
尿酸は人では溶解度が約7.0mg/dlと言われており、それ以上の高濃度になると尿酸は関節などに沈着して痛風を発症させる。
第一趾MTP(中足趾間)関節炎が典型的であるが、膝関節や足関節の単関節炎で発症することもある。発作を繰り返して高尿酸血症が持続すると、単関節炎から多関節炎になっていく。
しかし痛風発作時の尿酸値は必ずしも高いわけではなくむしろ、急激に尿酸値が上昇したり低下した場合に発作が起こる。身体所見で痛風結節の有無を確認することが重要。痛風の確定診断は関節液の尿酸結晶を確認すること。
◯高尿酸血症の管理
・高尿酸血症は痛風発作だけでなく、高血圧、慢性腎臓病、心血管イベントのリスク因子となる。その他2型糖尿病や脂質異常症のリスクとも。高尿酸血症の治療はこれらのリスクの軽減につながる。
・痛風発症のリスクとして尿酸値、性別、年齢、薬剤、基礎疾患、薬剤性などがある。
まずは生活習慣(体重減量、運動習慣の指導、こまめな水分補給、節酒・禁煙、糖分や魚肉を控えるよう)指導を行う。その上で、薬剤による治療を考慮する。
◯尿酸降下薬の適応(by ACRガイドライン2012+日本のガイドライン)
・リスク因子への介入をしても尿酸値9mg/dl以上(無症候性であっても)
・高血圧など痛風リスクが高い患者では8mg/dl以上
・慢性腎臓病ステージ2以上で高尿酸血症を合併している場合(CKDガイドライン2018では尿酸値8以上で薬物治療開始、6以下目標)
・痛風発作が年間2−3回認められている場合
・痛風結節が認められる場合
・慢性経過の痛風で骨関節破壊がある場合
・繰り返す尿路結石症で以下を満たす場合:尿酸結石で水分補給の指示、尿のアルカリ化でも予防・治療ができなかった場合、シュウ酸カルシウム結石で尿中尿酸排泄量が男性で>800mg/day、女性で750mg/dayの場合
・血液疾患化学療法時
★薬剤の絶対適応は痛風を繰り返すとき、腎機能が悪化しているときである。それ以外はいくら尿酸値が高くても薬剤無しで経過を見るのも一つの選択肢である。
◯薬剤の選択とフォロー
・治療の適応はよく考える:無症候性の高尿酸血症へのアロプリノールの使用は薬剤性過敏症症候群(DIHS)のリスクを高め、死亡リスクもあるために闇雲に使用してはならない。
・第一選択薬は尿酸生成阻害薬のフェブキソスタット(フェブリク®)かアロプリノール(ザイロリック®)。費用面ではアロプリノールの方が安くて有利ではあるが、尿酸効果作用はフェブリクのほうが上。副作用は同等(追記、ただしフェブリクの方が有害事象が多いとの報告も出つつある)
・アロプリノールは100mg/dayより開始(腎不全には50mg/dayより開始)。2〜5週間ごとにフォローして増量。アロプリノールはフェブリクと違い腎機能に応じて減量が必要。
・フェブリクは10mgよりスタート、尿酸値をフォローしつつ増量。最大60mg。
・治療の目標値は尿酸<6mg/dl以下。飽和状態で結晶化していた尿酸・痛風結節が溶けてくる。(痛風症状が残存する場合は5mg/dl程度まで下げる)
★フェブリクがアロプリノールより優れている点
・腎機能悪化でも減量の必要がない
・尿酸値低下作用がアロプリノールよりも優れている
・1日1回内服で良いのでコンプライアンス的に良い。
◯痛風発作発症時の対応、その後の対応
・急性期治療はNSAIDsもしくはコルヒチン
痛風ではコルヒチン初回1mg投与し、その1時間後に0.5mgを投与する。
その後は症状に応じて0.5-1.0mg/dayを継続する。
NSAIDsやコルヒチンの効果が乏しい場合は化膿性関節炎の可能性を再度考慮。
結晶誘発性関節炎の可能性がやはり高いのであればステロイド使用考慮する。
痛風ではプレドニン0.5mg/kg/dayを5−10日間投与する。
・痛風発作を複数回繰り返す患者では予防的にNSAIDs、コルヒチン、ステロイド考慮。
そもそも、なぜ高尿酸血症になっているのか?も大事。
◯高尿酸血症の原因
尿酸の値が高くなる原因は単純に言えば体内での合成量が増えるor 腎臓からの排泄が低下するのどちらかである。尿酸はプリン体であるアデニンやグアニンが代謝されて産生されるので、高プリン体食(肉類、魚介類、サプリメントなど)の摂取や抗がん剤投与による核タンパクの崩壊によって高尿酸血症が引き起こされる。
鑑別としては以下のものがある。
・特発性痛風
・メタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積に伴なう尿酸産生の亢進に加えてインスリン抵抗性や高インスリン血症によって腎臓での尿酸排泄が低下するようになり血中尿酸値は上昇する)
・プリンヌクレオチド代謝関連酵素異常症(レッシュナイハン症候群:X連鎖の遺伝子疾患。HGPRT欠損)
・核酸代謝の亢進による産生亢進(白血病、悪性リンパ腫、高プリン体食の過剰摂取など)
・ATPの代謝亢進による産生亢進(糖原病Ⅰ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅵ)、アルコール摂取
・腎からの排泄低下:腎不全、バーター症候群
・薬剤性(プラジナミド、サイアザイド系降圧薬、サリチル酸製剤など)
また追記します。