高カルシウム血症へのマネジメント
◯高カルシウム血症の評価、疫学
・低アルブミン血症の場合は補正を行う。Ca補正値=Ca+(4-Alb)
・補正は必須であるが誤差が出るので正確な評価のためには血ガスによってイオン化Caの測定をする。イオン化Caの基準値は1-1.4a mmol/Lであるが大体8倍をしたら血清Ca濃度となる。
・高カルシウム血症の頻度で多いものから順に
悪性腫瘍>腎臓透析中>原発性副甲状腺機能亢進症>ビタミンD中毒>サルコイドーシス>甲状腺中毒症という報告もある。
*悪性腫瘍の中で多い順は肺がん、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、腎細胞がん、卵巣がん、乳がん、肝細胞癌、子宮頸がん(沖縄であればATL(adult Tcell lymphoma)も考慮)
*透析中の場合は透析液のCa濃度を下げるなどで対応を行う
◯高カルシウム血症の症状
・血清Ca濃度が12mg/dlを超え始めると食欲低下、嘔気、口渇、多飲、多尿、便秘をきたす。
・血清Ca濃度が14mg/dlを超えるといわゆる高Caクリーゼの状態であり、上記症状に加えて精神症状・意識障害などをきたす。
◯高カルシウム血症の鑑別
血清Mg、Cr、PTH、25(OH)D評価。
■PTHが正常〜高値の場合
高Ca血症なのにPTHが高い場合:24時間蓄尿でCa/Cr評価
Ca/Cr>0.01の場合はPTHが異常に分泌している病態を考える→原発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺癌、多発性内分泌腺腫
Ca/Cr<0.01の場合は家族性低Ca尿性高Ca血症を考える
■PTHが低値(<20pg/ml)の場合
PTHが低値であればPTH関連蛋白を評価(PTHrP、25(OH)D、1,25(OH)2D)
・PTHrPの上昇:悪性腫瘍の評価
・1,25(OH)2Dの上昇:リンパ腫、サルコイドーシスに伴う高Ca血症
・25(OH)D上昇:ビタミンD評価中毒症、過剰投与
(ただし日本では25(OH)Dの測定は保険適応ないため注意)
・PTHrP正常かつビタミンD正常 :他の疾患を精査
→結核、薬剤性(サイアザイド、リチウム)、多発性骨髄腫、乳がん、リンパ腫、甲状腺機能異常性、ビタミンA過剰症、クッシング病、ステロイド投与、ミルク・アルカリ症候群
*25-OHビタミンDと1,25-(OH)2ビタミンD測定意義の違い
・血中25-OHビタミンDは皮膚で産生されたビタミンDと食物から摂取されたビタミンDの合計量を反映して変動するため、ビタミンDの代わりに測定される。
・一方、1,25-(OH)2ビタミンDは活性型ビタミンDとも呼ばれ、血液中のCa濃度が低下すると、腸管からのCa吸収を高め、骨への沈着を促す働きをする。健常者では副甲状腺ホルモン(PTH)によってその血中濃度はほぼ一定に保たれている。
*ミルク・アルカリ症候群とは…
食事中の高Ca食やCa製剤だけでは高Ca血症にはなりにくいが、それに加えてアルカリ化が食わさると排泄不全も加わり高Ca血症となりうる。
*二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症について
代表的な原因として腎性副甲状腺機能亢進症がある。慢性腎不全になると、腎臓でのリンの排泄およびビタミンD3の活性化が出来なくなる。また活性化ビタミンD3が低下すると、腸管からのCaの吸収が低下する。つまり、慢性腎不全の人は血液中のCaが低下し、Pが上昇するが、これらの状態は副甲状腺を刺激し、副甲状腺ホルモンの分泌を促す。そして長期間刺激され続けた副甲状腺は腫大し、やがて血液中のCaの値に関係なく副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される。
*薬剤性の場合の思考パターン
◯高Ca血症の治療
症候性もしくはCa>14mg/dlのパニック値であれば迅速な治療が必要。
・生理食塩水による補液(時間250〜500ml/h)。脱水補正。
・フロセミド20mg〜40mg投与による尿からのCaの排泄
・ビスホスホネートの経静脈投:ゾレドロン酸(ゾメタ®)4mgを15分以上かけて点滴静注。効果発現までおよそ3日かかるが1週間後にはCa濃度の正常化が期待できる。
・ステロイド投与:ビタミンDの作用抑制効果やリンパ腫の増大抑制をきたしして行う。プレドニゾロン60mg経口投与10日間。
おまけ:高Ca血症で腎機能障害が起こる理由
1,輸入細動脈の収縮による腎血流低下
2,多尿・脱水(腎性尿崩症)による腎前性腎不全
3,尿細管障害