急性尿閉への対応
「尿がでません」で来院する救急患者への対応
☆尿閉と無尿の違いは以下参照(尿閉と無尿の違いとその原因 - とある研修医の雑記帳))
・どんな症状で来るか
排尿困難、残尿感、尿勢低下、尿線途絶、下腹部の不快感など
・原因となる内服薬の確認
抗コリン薬(総合感冒薬)、三環系抗うつ薬、モルヒネ、カルシウム拮抗薬など原因となる薬剤ないか問診
・既往歴の確認
→尿道結石や尿道カテーテルの閉塞、前立腺肥大や前立腺炎など尿道を狭窄させる疾患ないか、他にも大動脈瘤や卵巣嚢腫など物理的な圧迫によっても生じる。
糖尿病による末梢神経障害や脳卒中など神経原性な尿閉もありうる。
・飲酒歴の確認
前立腺肥大を有する患者が多量に飲酒して尿閉になるパターンは多い。
(前立腺尿道の急性浮腫および尿道排尿筋の活動低下による)
救急外来でやること
◯血液検査;BUNやCreを測定して腎機能をチェック。腎機能悪化していれば腎後性腎不全として入院必要。炎症反応上昇していれば腎盂腎炎として対応。尿閉時間が24時間以上と長い場合は高カリウム血症の合併なども注意。
◯尿検査:感染や出血の有無もチェック
→尿検査で血尿、血症尿、pH高値(>7.5)などあれば腎結石を疑う。
一方で膿尿、細菌尿、pH高値、亜硝酸塩陽性などの所見があれば感染を疑い尿培養も提出。
◯腹部エコー:上部尿路の拡張(腎盂拡張)があるかないか調べる。
ピットフォール
悪性腫瘍の既往がある場合は脊髄・脊椎への転移による膀胱直腸障害も考慮。
尿意があり超濃ゆ心で前立腺肥大を触知すれば下部尿路閉塞を考えるが、尿意がなく直腸診で肛門括約筋トーヌス低下があれば神経因性膀胱を疑う。
発熱もある場合はADEM(急性散在性脳脊髄炎)など稀な疾患も頭の片隅に。
●処置
尿路閉塞の原因は様々あるが、いずれにしても初期治療として導尿は必要。まず2%リドカインゼリーを尿道に注入し、その後フォーリーカテーテルを挿入する。もし患者が強い疼痛を訴えるようであればリドカインゼリーを注入後10分程度そのままにし麻酔が効くのを待つ。
カテーテルが膀胱まで達したら採尿バッグへ採尿を開始。500ml以上の採尿が認められて全身状態落ち着いていればフォーリーカテーテルをレッグバッグに接続し翌日泌尿器科受診するように指示。患者によってはカテーテル留置した状態で帰宅を望まないこともあるが、尿閉の原因で前立腺肥大が疑われるのであればα遮断薬の処方も有用。