精巣捻転と精巣上体炎の鑑別
精巣捻転と精巣上体炎(副睾丸炎)の鑑別
精巣捻転は発症後6時間以上で不可逆的な障害が起こり、精巣が壊死するため急性陰嚢痛は否定されるまで精巣捻転として扱う。以下精巣捻転と精巣上体炎の違いを紹介。この表のような典型例であれば鑑別に難しくないように思えるが、精巣捻転の可能性が少しでもあれば泌尿器科コンサルするのが必要。
◯精巣上体炎について
・精巣上体の場所
http://medical-checkup.biz/archives/3577
精巣上体炎の原因としては尿路より逆行性あるいはリンパ行性に前立腺炎、尿道炎、膀胱炎から波及して起こる。直腸診で前立腺の圧痛を認めるが、尿路感染がはっきりしない場合もあるのであくまで参考所見の1つとして考える。
発症初期には触診により精巣上体に圧痛を認めるが、炎症が精巣まで波及すると精巣全体の痛みとなる。
原因菌としては淋菌、大腸菌、クラミジア・トラコマティスなどが典型的。
尿道留置カテーテルや尿道的手術後などに発症することも多い。
治療は抗菌薬に加えてベッド上安静、局所の冷却、鎮痛薬の投与など。
”レジデントのための感染症診療マニュアル”によると
35歳未満であれば…
・ロセフィン®250mgにリドカイン2−3ml溶解して一回筋注。これに加えてジスロマック®1000mgを一回内服
・もしくはクラビット500mg/dayを10日間
35歳以上であれば…
クラビット500mg/dayを10日間
などの処方例が紹介されている。
◯精巣捻転について
解剖学的な理由により精巣の固定が不十分な場合、精巣が精索を軸として回転してしまうことが原因で発症する。睡眠中の発症が多く、その他スポーツや自転車、体位変換、自慰などが発症時頻度として多いと言われている。
通常は思春期頃や新生児期に多く見られる。30歳以上の発症は稀。
症状は陰嚢部の急速な腫脹・圧痛、激しい精巣痛などに加え、嘔気・嘔吐・腹痛といった腹部症状も多い。精巣上体炎と異なり突然起こり発症のタイミングを患者が答えられるのが特徴。発熱が無いことや炎症反応上昇がないことも大事であるがより重要なのはカラードップラー検査。健側と比べて血流を認めないか低下している場合に精巣捻転が疑われる。
発症6時間以内に精索切開し、直視下に整復手術が必要。疑ったら泌尿器科に緊急でコンサルする必要あり。24時間以上経過すると循環不全から精巣壊死となってしまう。特に小児では訴訟リスクが高いのでコンサルトを躊躇してはならない疾患の1つ。