つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

鉄欠乏性貧血を疑ったら(慢性炎症に伴う貧血との鑑別)

鉄欠乏性貧血を疑ったら(慢性炎症に伴う貧血(ADC)との鑑別

 

・MCV(平均赤血球容積)<80で小球性貧血がある場合、まずは鉄欠乏性貧血が疑われるが、実際には慢性炎症に伴う貧血も多い。

・慢性炎症に伴う貧血(ACD:anemia of chronic disease)とは感染症、膠原病、心不全、糖尿病、悪性疾患、外傷などに伴う貧血でサイトカインな大量に出ることによって鉄の利用障害や赤血球寿命の短縮などが原因とされている。

 

・MCV75以下であれば鉄欠乏性貧血の可能性が上がる。

MCV70以下:尤度比12

MCV70〜75:尤度比3.3

MCV:75〜80:尤度比1.0

MCV80〜85:尤度比0.91

MCV85〜90:尤度比0.76

MCV90以上:尤度比0.29

 ・フェリチンが30以下でも鉄欠乏性貧血の可能性が上がる

フェリチン15以下:尤度比52

フェリチン15〜24:尤度比8.8

フェリチン25〜34:尤度比2.5

フェリチン35〜44:尤度比1.8

フェリチン45〜100:尤度比0.54

フェリチン100以上:尤度比0.08

 

◯MCVとフェリチンから次のように考える

・フェリチン15以下:鉄欠乏性貧血と診断:鉄剤投与

・フェリチン15〜30:鉄欠乏性貧血を考慮。状況によっては慢性炎症に伴う貧血の合併も考えるが、治療としては鉄剤の投与を行う。

・フェリチン30〜100:鉄欠乏性貧血と慢性炎症による貧血両方の合併の可能性がある。慢性炎症疾患の治療をしながら鉄剤を投与して反応をみる。

・フェリチン100以上:小球性貧血であれば慢性炎症に伴う貧血と考える。が、フェリチンが値だけでは鉄欠乏性貧血の除外はできない。

 

◯慢性炎症がある場合のフェリチン高値に関して 

・炎症性疾患や透析患者ではフェリチンが400以上であっても鉄欠乏性貧血の否定はできない。

・肝硬変がある場合はフェリチン200〜400程度に上昇していても尤度比1.0と鉄欠乏性貧血の否定的根拠とは全くならない。

・透析患者の場合:フェリチン500以上であればほぼ鉄欠乏性貧血は否定できる。透析患者における鉄欠乏性貧血の基準はフェリチン100以下かつトランスフェリン飽和度20%以下で、この時に鉄剤投与が推奨されている。

 

◯TIBCに関して

フェリチンに続いてTIBCが鑑別に有用。

TIBCが高値(315以上)であれば鉄欠乏性貧血を考える。慢性炎症に伴う貧血であればTIBCは低下。鉄欠乏性貧血を合併していれば正常かやや上昇する。

 

Q、鉄欠乏性貧血でTIBC上昇する理由

鉄欠乏性貧血では体内鉄の不足が原因で起こり、体内鉄である血清鉄およびフェリチンが低下するが、 総鉄結合能(TIBC)はその体内鉄の不足を補おうとする結果、増加する。

 また追記します。