トランスフェリン飽和度(TSAT)と鉄剤投与の目安
✅鉄は血液中ではトランスフェリン蛋白に結合し運搬されている。
トランスフェリンの量が総鉄結合能(TIBC)。
そのうち、鉄が結合していないトランスフェリンの量が不飽和鉄結合能(UIBC)。
よって、TIBC=血清鉄+UIBCとなる。
https://vitaminj.tokyo/archives/7599より引用
✅トランスフェリン飽和度(TSAT)とは?いつから鉄剤を投与するべきか
=全体に占める鉄の割合
=血清鉄/TIBCと計算できる。
TSATの正常値は20ー30%程度であり、フェリチンの値に関わらず20%以下であれば鉄が造血に使われていない可能性が考えられる。
日本の腎性貧血ガイドラインではフェリチン値<100ng/mLかつトランスフェリン飽和度(TSAT)<20%の場合のみ鉄の補充が推奨されていた。2015年のガイドラインでは鉄利用率を低下させる病態が認められない場合には、血清フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%で鉄補充を提案すると記載されている。
例えるならフェリチンは銀行口座の預金残高とすれば、TSATは財布のお金である。フェリチンがいくら高くても(銀行口座にお金がいくらあっても)、財布にお金が無ければ(TSATが低ければ)造血には鉄を使えないということになる。よってフェリチンが高くても低くても、TSATが低ければ鉄補充をすることによって貧血が改善する可能性があると考えられている。
✅フェリチンは
鉄結合蛋白で肝臓や脾臓に多く存在するが、一部は血中にも存在する。血清フェリチンは組織フェリチン量、間接的には貯蔵鉄料を反映するので、鉄欠乏では低値に、鉄過剰では高値になる。血清フェリチン値<12ng/mLで絶対的鉄欠乏と診断する。しかし慢性炎症状態のときは血清フェリチンが上昇するので注意が必要。
前述の通り、以前はフェリチン<100もしくはTSAT<20%が鉄剤投与の基準であった。鉄の過剰投与によって細胞・臓器障害を招く危険性があるからである。しかし、フェリチンが高く、TSATが低い貧血患者が実際には多くいて、そういう患者には鉄剤投与で貧血が改善できる可能性があり、新しいガイドラインではフェリチン<100またはTSAT<20%で鉄剤使用考慮となった。