二次性高血圧の鑑別・検索
二次性高血圧の鑑別・検索についてのまとめ
✅腎実質性高血圧
①慢性糸球体腎炎などの腎臓の基礎疾患がある場合の高血圧
②糸球体濾過量が減少した場合の高血圧(CKDステージ3以降)
✅腎血管性高血圧(RVHT)
・原因としては腎動脈狭窄(RAS)の他に、大動脈炎症候群、結節性多発動脈炎、解離性大動脈瘤、動静脈瘻など。若年者の高血圧なら線維筋性異型が多い。
・腹部血管雑音の有無をチェック。
・アルドステロン上昇による低カリウムの有無があるかどうか。
・ACE阻害薬やARB投与後に急激な腎機能の悪化を認める場合は両側性のRASを強く疑う。
・RVHTが疑わしい場合は血漿レニン活性(PRA)を調べる。(注意点としては、腎動脈狭窄があったとしても、慢性的な体液貯留があるとPRAは低下してしまう場合がある。
・腎血流ドップラー検査
→腎動脈起始部ならびに腎内の区域動脈の血流を検出し、RASの評価を行う。
狭窄度75%以上の優位狭窄を疑うのは、腎動脈本幹の最高流速が1.8m/sec以上で腎内の区域動脈で狭窄後パターンの時である。
→疑わしければCT・MRI血管造影を検討。
✅原発性アルドステロン症(PA)
・ARP>200のスクリーニングでPAを疑う。
*ARR=PAC(血漿アルドステロン濃度)(pg/ml)/血漿レニン(PRA)(ng/ml/h)
・精査前にはRA阻害薬や抗アルドステロン薬は休薬(CaBやα遮断薬に切り替える)
・ACE阻害薬、ARB内服中だとPAC低下およびPRA上昇で偽陰性を起こしうる(→ACEi・ARB内服中でARP<200であれば休薬して再検する)。
・β遮断薬もPRA低下で偽陽性を起こしうるが、β遮断薬内服でARR<200であれば原発性アルドステロン症は否定的と言って良い。
・スクリーニング陽性であればCCT,FUT、SITで原発性アルドステロン症の確定診断を行う。以下の3つのうち複数で陽性となればPAと診断する。
①カプトプリル負荷試験(CCT):カプトプリル®50mg内服後、臥位と安静60分(90分)で採血し、PACとPRAを測定する。
→負荷後60分(90分)のARR>200(もしくはPAC/ARC>40で判定)
②フロセミド立位負荷試験(FUT):フロセミド40mg静脈注射後、2時間立位を保持した後に座位で採血し、PRA(ARC)を測定する。
→負荷後PRA<2ng/ml/h(ARC<8pg/ml)で判定
③生理食塩水負荷試験(SIT):生理食塩水2Lを4時間かけて点滴後に採血してPACとPRAを測定する。
→負荷後PAC>60pg/ml(PRA<1ng/ml/hを確認して続発性アルドステロン症を除外)
・手術を希望する場合は、AVSによる局在診断を行う
(利尿薬と抗アルドステロン薬は精査の6週間以上前から休薬する)
・内科的な治療は抗アルドステロン薬(アルダクトン、セララなど)
✅褐色細胞腫
・臨床症状や特徴的な血圧所見(発作性高血圧や起立性低血圧など)
・代表的な症状は5H(高血圧、代謝亢進、高血糖、頭痛、多汗)。その他にも非典型的な症状として不安感、イライラ、消化器症状などもある。
・血液検査:血中カテコラミン分画(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は参考になるが、半減期が短く変動が大きいため代謝産物の測定が有用。
・日本で保険適応があるのは尿中メタネフリン分画(蓄尿あるいは随時尿でクレアチニン補正。クレアチニン補正すれば外来でも簡便にスクリーニングできる)
・カテコラミンおよびその代謝物の検査には偽陽性も多いので注意(カテコラミン系は健常人でもストレス下で基準値上限の2倍程度には上昇しうる)
TIPS
・精査前の降圧薬の休薬はどうするか?
→RA阻害薬やβブロッカーなら2週間程度。アルドステロン拮抗薬や利尿剤は6週間〜2ヶ月程度開けるべき。
・レニン活性とレニン濃度の検査の使い分け
→安定性はレニン濃度のほうが高い。しかし、現在主流の診断基準はレニン活性を用いているため現時点ではレニン活性の測定が望ましいか。
また追記予定。