心エコー:菲薄化とエコー輝度上昇について
⭕心筋梗塞後の特徴的な心エコー所見
・局所的壁運動の異常
・収縮期の壁厚増加の減少または消失(通常は拡張期よりも収縮期の方が壁厚が増加する所見が得られる)。
・心筋の局所的な菲薄化(≦0.6cm)
⭕菲薄化について
心筋の局所的な菲薄化は虚血性心疾患を示唆する。虚血後に心筋がダメージを受けて線維化することによって心筋組織が変性し、瘢痕化した心筋が菲薄化してエコー輝度も上昇する。希薄化している場所が冠動脈血流で説明できるかどうかという点である。冠動脈支配領域の末梢側に一致して菲薄化していれば虚血性心疾患を考える。ただし、慢性期の心筋の菲薄化は心筋バイアビリティの消失を意味するが、それは急性期には判断できない。一方で心サルコイドーシスのように血流支配に一致せずに菲薄化する病態もあるので注意。
⭕菲薄化と壁運動の意義の違い
陳旧性の心筋梗塞では壁運動が低下していても心筋の菲薄化がなく(=壁厚が正常)、輝度上昇がなければ心筋のバイアビリティ(心筋生存能)はあると考えられる。逆に壁が菲薄化してエコー輝度も上昇している状態では心筋のバイアビリティはなく、回復は難しい。ただ安静時の情報のみでは判断も難しいので運動負荷心電図や薬剤負荷心電図で心筋のバイアビリティを評価することになる。
左室機能障害と慢性冠動脈疾患とを有する患者においては、血行再建術によって左室機能や症状が改善される症例がある。このような症例では、安静時虚血や一過性の反復虚血によって心筋細胞の正常な収縮性は欠如しているが、細胞膜は健全に機能し、十分な代謝活性を維持しているものと考えられる。この細胞膜の健全性と種々の代謝活性を評価することが重要である。
⭕菲薄化、エコー輝度の上昇の写真を紹介
✅前壁〜前壁中隔の壁の菲薄化