(文献)電気ショックに関してのチップス
(文献)電気ショックのミニレビュー
ミニレビューからの覚書
✅電気ショック成功へのファクター
・エネルギー量は電圧と電流の組み合わせで決まる。
・電気ショックが成功するかはパドルの大きさ、貼る場所、胸壁のインピーダンス(電気の流れにくさ)、付加される電流の大きさなどの要因によって規定される。
・成功率を下げる要因としては:パドル間の距離が開きすぎている、パドルとスキンの密着具合(間に空気があるとだめ。空気は電流の流れを阻害する)、電気ショックの施行回数(ショックをするとインピーダンスが低下する)、前のショックからの経過時間(3分間経てば抵抗値は下がる)、身体的特徴(高身長や肥満9などである。
・電気ショックの成功は複数の因子が影響するが、最も大事なことの1つが時間である。Afの電気ショックで長期的な成功(洞調律維持)と関係するのはAFの持続時間が1年以上かどうか、左房径が5cm以上かどうかが関係する。
・心筋のアデノシンは除細動閾値を上昇させるため、除細動閾値はVFの持続時間と関係がある。アデノシンが多く分泌されると除細動にとっては良くないことになる可能性が示されている。
・他の報告としてもカリウム濃度も除細動閾値を上昇させる可能性が示されている。
・AFの持続時間が長い患者は、全体的に虚血になるため再分極後不応性や伝導遅延が起こる。
✅鎮静について
・わずか1Jの刺激でも患者は苦痛を伴う。意識のある状態で電気ショックを行うとその後人生で長期に渡る情動障害やPTSD発症のリスクになるので避けなければならない。深い鎮静が電気ショックの際は必要である。
・ベンゾジアゼピンの単独投与もしくはアヘン系との併用投与は推奨されていない。
・プロポフォールが電気ショック時の鎮静としては理想的である。プロポフォールはソック性があり、気管支攣縮のリスクが少なく、投与中止後速やかに効果消失するからである。
✅エネルギーの選択
・二相性波形除細動器は単相性除細動に比べて低エネルギーで同等の効果を発揮する。
(二相性の150Jでのショックは単相性の200J→300J→360Jと徐々にエネルギーをあげていく連続的なショックと同等の効果がある)
・二相性波形でのショックは単相性に比べて蘇生後の心筋機能不全を大幅に低下させることができる(なので第一選択は二相性除細動器。無ければ単相性でも可)
・心房細動での電気ショックでは初回は100〜200Jが推奨される(成功率は50%程度)。
・心房粗動に関して、初回のショックエネルギーで50Jと100Jを比較すると100Jがより良かったとの報告がある。
・心室頻拍(単源性)に対しての初回電気ショックでは100〜200Jが推奨されるが、より弱いエネルギーでも同等の効果があるかもしれないと言われている。一方、多源性の心室頻拍や心室細動に関しては200Jが推奨される。
・受攻期T波のときにQRSが乗ることによる(いわゆるR on T)でVFを起こさないためにR波との同期は必須(VFとpulse lessVTでは無理)。
・洞性頻脈での無意味な電気ショックは避けるべきなので12誘導心電図をよく見る。(単誘導のモニターだけで電気ショックの必要性を判断しない!)
・心室粗動(AFL)は薬剤での再発予防は非常に難しいため、再発するAFLはカテーテルアブレーション治療が推奨される。
✅カルディオバージョンの合併症と禁忌
合併症の発生は少ない。ありうるものは以下の通り
・全身麻酔やR波同期をせずに電気ショックをすることによるVFの誘発
・不十分な抗凝固薬の使用による血栓症(洞調律化のタイミングで遊離)
・非持続性心室頻拍、上室性不整脈、脚ブロック、徐脈、一過性の左脚ブロック、心筋壊死、心筋機能不全、一過性低血圧、肺水腫、皮膚熱傷など。
・電気ショックの禁忌は不十分な鎮静と左房内に血栓があることである
✅電気ショックで失敗したときの対応と失敗しやすい病態
・電気ショックを繰り返すことはリスクとベネフィットを考慮して行うべきである=不必要な電気ショックは避ける。
・うっ血性心不全におけるAfでの電気ショックはより多くのエネルギーを必要とする。よって心不全治療をしてドライウェイトを達成しておくことは電気ショックの成功率を上げる上で重要である。
・赤血球像多症でも電気ショックは失敗しやすい。瀉血してヘマトクリット50以下にしてから行うのが望ましい。
・重度の僧帽弁弁膜症で心房に巨大な傷があり弁置換術や形成術を受けた患者もまた電気ショックに抵抗性であるし、またうまく行っても洞調律維持が難しい。