大動脈解離の診察のポイントと緊急度
大動脈解離は一般的に突然の胸背部痛で出現する。
裂けるような痛み、移動する痛みが特徴的である。
診断のゴールドスタンダードは造影CT。血液検査のDダイマーも感度が非常に高いので陰性であれば否定的と言える。
大動脈解離が非常に疑わしい場合または診断ができた場合は解離がどこまで至っているかが重要である。診察のポイントとしては
⭕ショックバイタル、頸静脈の怒張、脈圧の低下、心音減弱ないか?
→合併症で心タンポナーデを発症していないか?
⭕大動脈弁領域の拡張期雑音を聴取しないか?
→大動脈弁閉鎖不全症を合併の有無
⭕上肢血圧の左右差はないか?
→上肢で20mmHg以上差があれば腕頭動脈への解離の波及を考える
⭕両大腿動脈の触知の左右差や下肢のチアノーゼ出現がないか?
→解離が腸骨領域に波及することで下肢血流が減弱する。
⭕腹痛の出現はないか?
→上腸間膜動脈へ解離が波及することで血流低下・腸管虚血。
⭕意識障害や神経症状出現はないか?
→大動脈弓部の上行3分枝(右腕頭動脈、左総頚動脈、左腕頭動脈)に解離の波及がないか。もしくは肋間動脈へ波及しても対麻痺は起こる。
上記の合併症はいずれも緊急性がある。
【部位による分類】
・stanfordA型開存型、ULP型:緊急手術。48時間以内に大動脈破裂するリスクが高い。
・stanfordA型閉塞型:大動脈径が50mm以上あるいは偽腔径が11mm以上であれば準緊急〜緊急手術
・stanfordB型:一般的には内科治療だが致死的な合併症(大動脈破裂、腸管虚血、臓器虚血、下肢虚血など)があれば緊急の侵襲的治療を考慮する(ステントグラフト内挿術もしくは手術)