筋萎縮へのアプローチmemo
筋萎縮へのアプローチmemo
●問診のポイント
・何歳ごろ発症したか(急性か、亜急性か、慢性か)
・家族歴
・筋萎縮はどこから始まったか(近位か遠位か)
・しびれのような感覚障害を伴っていないか
・筋痛、脱力発作、複視、嚥下障害などの随伴症状はないか
●ルーチンで行うべき検査
・血液検査:炎症性ならWBC上昇、筋障害ならAST、ALT、LDH、CK上昇。その他血糖値(糖尿病による神経障害)、甲状腺や抗核抗体なども必要に応じて測定する。
・筋電図:筋原性と神経原性の鑑別。筋原性では持続時間が短く、低振幅の電位パターン。神経原性では持続時間が延長、振幅の増大、線維性攣縮。筋緊張性ジストロフィーでは筋強直性放電も見られる(急降下爆撃音)。
・末梢神経伝導速度:末梢神経障害の有無を調べられる。
・筋CT、MRI、エコー:筋萎縮の分布を調べるのに有用
●神経原性か筋原性かを考える
はっきりとした筋力低下、筋萎縮には上位運動ニューロン、下位運動ニューロン、筋肉のどこかに必ず障害があると考えられる。
大脳皮質運動領域(一次運動ニューロン)→放線冠→内包→大脳脚→錐体→側索→前角細胞(二次運動ニューロン)→末梢神経→神経筋接合部→筋肉
画像参照:http://nannet.org/als/kisotisiki.html
筋萎縮は神経原性筋萎縮と筋原性筋萎縮に分類されるが、それぞれの障害部位は以下の通り。
神経原性筋萎縮:前角細胞の障害(二次運動ニューロン障害)あるいは、その軸索である末梢神経の障害
筋原性筋萎縮:筋肉の障害
なお、一次運動ニューロンや神経筋接合部の障害では通常筋萎縮は起こらない。
◯神経原性筋萎縮の特徴
一般的に遠位筋から障害されることが多い。
前角細胞障害では線維束性収縮が強く認められる
前角細胞障害であれば感覚障害は目立たないが、末梢神経障害であれば感覚障害や自律神経障害を伴なうことが多い
採血でCK上昇は認めない
筋電図でで神経原性パターン(高振幅電位)
針筋電図ではfibrillation,fasciculationなど急性脱神経所見や高振幅長時間持続の慢性脱神経所見が見られる
筋生検で群集萎縮
◯筋原性筋萎縮の特徴
一般的に近位筋障害が強く、感覚障害や自律神経症状は伴わない。
採血でCK上昇を認めることが多い。
筋電図検査で筋原性パターン(低振幅電位)
針筋電図で低電位短時間持続の筋原性変化を認める
筋生検で筋繊維大小不同
●どこに萎縮が起きているのか観察する
◯限局する筋萎縮の場合
・筋疾患の可能性は低い。筋萎縮の分布が脊髄の髄節に一致していれば脊髄あるいは根障害、末梢神経の支配に一致していれば単神経障害を示唆する。
◯四肢の遠位筋から始まるタイプで感覚障害ない場合
・遠位筋から障害が始まればまずは神経原性筋萎縮を考える。
・線維束性収縮があればALSなどの運動ニューロン病が鑑別に挙がる
・線維束性収縮がなければ遠位型ミオパチーや筋強直性ジストロフィーなど。
・例外として多巣性運動性ニューロパチーは運動優位に障害をきたし、感覚障害を伴わないニューロパチーであることもある。
・母指球や小指球に萎縮が目立つタイプではALSのような運動ニューロン病以外にも変形性頚椎症や脊髄空洞症、末梢神経障害でもありうるので鑑別に注意。
◯四肢の遠位筋から始まるタイプで感覚障害がある場合
・まずは末梢神経障害を疑うが、鑑別は多岐にわたる
・内分泌代謝疾患、薬剤性、中毒など。
・逆シャンペンボトル様の下肢があればシャルコマリートゥース病疑う
・家族歴があれば遺伝性運動性感覚性ニューロパチー
また追記します。