急性硬膜下血腫と硬膜外血腫の違い
硬膜下血腫と硬膜外血腫の違い
(似ている病態の整理)
頭部外傷後に起こる頭蓋内血腫の似た疾患として硬膜外血腫と硬膜下血腫がある。
硬膜外血腫は文字通り硬膜の外側に血腫が出来るのに対して、硬膜下血腫は硬膜の内側に血腫ができる。
●急性硬膜外血腫
・重症頭部外傷の11%に出現。
・原因としては打撲による頭蓋骨骨折が起こり、その直下にある硬膜外を走る硬膜動脈からの出血、あるいは頭蓋骨骨折によって頭蓋骨からによって血腫が形成される。
・CT上で凸レンズ型の高吸収域になる。頭蓋骨を内側から硬膜を剥がしながら血腫が増大するために凸レンズ状になる。
・意識清明期(lucid interval)があるのが特徴。搬送されてきた時は意識がしっかりしているのに数時間後には意識がなくなっている場合があるので注意。これは頭部外傷で脳自体はダメージを受けていないことを意味している。血腫の増大によって神経症状が出現しているのである。すなわち血腫を除去すれば予後良好、血腫の除去が遅れれば不可逆的なダメージを受ける。
・意識清明期について:診察時は意識清明であってもその日のうちに意識状態が悪化することがある。衝撃が強い場合であれば入院させて24〜48時間は経過をみたほうが無難。衝撃が強ければ外傷後3日後までは遅れて意識障害を呈しうる。
・急性硬膜外血腫の3割ほどは急性硬膜下血腫や脳挫傷を合併すると言われており注意が必要。
・治療は緊急に開頭して血腫除去。脳浮腫に対してグリセロールなど使用。
(急性硬膜外血腫の一例)
(急性硬膜外血腫の一例その2)
参考:http://www.koshigaya-jiko.com/126/126029/
・急性硬膜下血腫
・重症頭部外傷の35%に出現。
・原因は脳表の微小血管損傷を出血源とするが、架橋静脈の断裂により出血する場合、そして脳挫傷に伴なう脳実質から出血する場合とがある。頻度としては脳実質から出血することが多く、硬膜外血腫と違い硬膜下血腫は脳そのものがダメージを受けていることが多い。よって外傷初期から強い意識障害や神経症状の出現があれば予後は悪い。
死亡率は50%程度とされる。
・CTで硬膜とくも膜の間に三日月状に血腫が広がるのが特徴。
・加齢による脳萎縮から硬膜下腔が拡大するため高齢者に多く見られる。
・治療は硬膜外血腫と同様に開頭による血腫除去やグリセロールで脳浮腫を抑える。また脳挫傷を伴えばステロイドによる脳圧降下も行う。
(急性硬膜下血腫の一例)
(急性硬膜下血腫の一例その2)