頭部外傷へのアプローチ
頭部外傷へのアプローチ
ポイント
・外傷機転を聞く(他の内科疾患などないか)
・意識レベル、バイタルの評価と安定化
・身体所見(頭蓋内圧亢進、頭蓋底骨折はないか)
・頭部CTはどんなときに必要か
・帰宅させて良いのか
・受傷機転を聞く
なぜ頭部外傷を引き起こしたのか。転倒などが原因なら内科疾患が隠れていないか調べる→低血糖、低血圧、不整脈、TIAなど
・意識レベル、バイタルの評価
【意識レベル】
GCS、JCSできちんと評価する。GCS8点以下では気管挿管考慮。会話が可能であれば見当識を評価(→時間、場所、人)
参考:JCSとGCSの違い、覚え方 - とある研修医の雑記帳
同伴者がいれば、いつもと様子が変わらないか必ず聞く。
☆lucid interval(意識清明期)には注意が必要。来院時は意識清明でも後で意識レベルが悪化することがある。が、大抵は診察時にどことなくおかしい、ソワソワしていることが多いと言われている。
【SpO2】
頭部外傷の約半数は低酸素血症を合併する。必要に応じて高濃度酸素投与。
【血圧】
頭部外傷だけであれば血圧が上昇し、脈拍は下がる。もしショックバイタルなら頭部外傷だけでなく骨盤骨折や腹腔内出血、緊張性気胸などもないか検索する。そしてショックの検査治療が優先!(ショックになる頭部外傷の例外として…開放性頭蓋骨骨折、頭部からの大量出血など)
【身体診察】
・頭蓋内圧亢進症状はないか?(血圧↑、徐脈、脈圧増大)
クッシング現象:頭蓋内圧が亢進すると脳に血が行きにくくなるので血圧を上げてなんとか血液を送ろうとする。その結果、血圧上昇、徐脈となる。拡張期血圧は変わらないので脈圧は上昇。
・脳ヘルニアに至ってないか(頭蓋内圧亢進で脳が逃げ場を失い脳ヘルニアへ)
・麻痺はないか
・瞳孔不同はないか?
・神経学的所見の有無→両膝立つか、腕を上げて落として避けるか。
もし脳ヘルニアが疑われたら
・ベッド30度挙上→脳から全身の方に圧が逃げてくれる
・マンニトール投与→浸透圧で脳圧が軽減する。
・過換気(呼吸数20回)→CO2は脳血管を拡張させるので過換気でCO2を出せば血管収縮して脳への圧負担減る。ただし脳ヘルニアないのに予防的過換気は禁忌。
・その他:髄液漏を伴う開放性骨折、陥没骨折(5mm以上)、神経所見の経時的悪化などあれば重症頭部外傷として扱う
【頭蓋底骨折はないか】
◯バトルサイン:中頭蓋窩骨折を示唆
◯パンダの眼:篩骨洞天板骨折を示唆
◯鼓膜内血腫:中頭蓋窩骨折を示唆
●頭蓋底骨折の検査として…↓
・髄液鼻漏:リングサインを認める(ring testとは何か)
・X線で頭蓋内気腫、蝶形骨洞に液面形成を認める
(単純撮影は情報量が少ないので必ず3方向で撮影する。正面、側面、towne)
もしも頭蓋骨の線状骨折で縫合をまたぐ場合は硬膜外血腫の可能性があるので頭部CT取る。
【頭部CTはいつ取るべきか】
TRAUMA ABCDEs
T:Toddler 2歳以下
R:Repeated vomiting 繰り返す嘔吐
A:Acceleration of headache 増強する頭痛
U:Unknown mechanism 受傷機転不明
M:multiple trauma 多発外傷
A:Amnesia 健忘
A:Altered level of consciousnes 意識障害(GCS14以下)
B:Battered Chile 小児虐待
C:Convulsion (外傷後に出現した)痙攣
D:Dtug 中毒、アルコール
E:Eldery 高齢者
S:Skull fx 頭蓋底骨折、陥没骨折
(注意)CT室は最も危ないところ。ちゃんと様子を見守る。
(注意)受傷後1~2時間でのCTで血腫が小さいとしても安心できない。これからもっと大きくなりうる。脳外科にコンサル必要。
【帰宅させて良いのか】
・慢性硬膜下血腫が1~3ヶ月後に出現する可能性を説明(特に高齢者、抗凝固・抗血小板療法の患者、アルコール多飲患者)
・状態が悪化したら再度受診するように指示(意識障害、増強する頭痛、嘔気の出現・増悪、麻痺など神経学的所見、けいれん発作など)
・当日の食事は少なめにする。家で誰かと一緒に過ごしてもらう。独居の場合は入院も考慮。
また追記、編集します。