(症例)若年スポーツ選手の下肢のチアノーゼ
高校のラグビー選手が下肢の疼痛
画像参照:https://rugby-island.com/beginner/play/2661/
練習中に右下腿部の痛みで来院。
時々足の色が悪くなるという。
レントゲンで骨折はなし。特に外傷もなし。
チアノーゼの訴えもありABI施行するが両側とも正常。
→特に治療介入無しで経過観察。
後日、症状改善しないため再度来院。
2度目のABI施行で左1.11、右0.75と明らかな右の低下あり
造影CTを施行すると右膝窩動脈付近の完全閉塞を認めた。
(側副血行路を介して末梢まで血流は確認)
さて、診断は・・?
答え:膝窩動脈捕捉症候群
スポーツ選手が筋トレをしすぎて腓腹筋が肥大し、膝窩動脈を圧排することによる動脈狭窄。正常時ではABI正常でも足関節を屈曲させた時だけ膝窩動脈が圧排されるので要注意。疾患を想起できないと見逃されうる症例。
(解説)
・膝窩動脈捕捉症候群は先天的な膝窩動脈の走行異常または膝窩部の異常筋束により,同動脈の圧迫・狭窄・ 閉塞をきたす疾患である。比較的まれな疾患であるが、30歳以下の若年者で間欠性跛行を訴える患者の約0.4%に認められるとされている。
・男性、特に強度の下腿筋運動を行うスポーツ選手に多く、症状出現には先天的要因に加え、運動負荷などによる膝窩動脈周囲の筋肉や腱膜組織の発育に伴う動脈圧迫の関与も考えられる。
・治療:膝窩動脈の閉塞がなければ筋切離術のみ。動脈閉塞があり、内膜変性が高度であれば自家静脈置換術やバイパス術など検討。
・血行再建術の開存率が65%で筋束切除術のみで治療できた例の開存率95%と比較して不良であったという報告もあり,軽症状の段階での早期発見・治療が重要と思われる。
・ABIは下肢虚血のスクリーニングとして用いられるが、平時には正常径を示す膝窩動脈が足関節の屈曲によって腓腹筋が収縮することで膝窩動脈が圧排されるケースが50〜70%に見られると報告されている。疑わしい場合は超音波検査やCTでの精査も重要。