間欠性跛行の鑑別
間欠性跛行の鑑別
頻度の高い主な鑑別疾患としては
・整形外科疾患の脊柱菅狭窄症
・血管疾患の閉塞性動脈硬化症
が挙げられる。また脊柱菅狭窄症と似た疾患として腰椎椎間板ヘルニアもある(間欠性跛行の頻度は低いが)
【問診】
・年齢
→若年であれば腰椎椎間板ヘルニアが多く、壮年であれば脊柱管狭窄が多い。
・血管リスクファクターの有無
→有れば閉塞性動脈硬化症を考える
・痛みとしびれの出現パターン
→ミオトームに一致した筋力低下やデルマトームに一致した下肢や臀部の疼痛があれば神経症状を考える(→ヘルニアor脊柱菅狭窄症)
・膀胱直腸障害(排尿障害の出現の有無)
→馬尾障害が出ていれば膀胱直腸障害・性機能不全などが出現しうる。椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症どちらでも起こりうる。
【身体所見】
・大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈の触診:脈拍触知が出来なければ閉塞性動脈硬化症をまずは疑う→ABI・エコーなどで精査
・下肢腱反射(膝蓋腱反射・アキレス腱反射)、バビンスキー反射(脊髄症との鑑別に重要)
・FNSTが陽性かどうか
FNST(femoral nerve stretch test)は腰部神経根症状の有無を確認するための検査で、患者の方をうつ伏せに寝せて、膝関節を屈曲、股関節を伸展させることで、大腿神経を緊張させ疼痛を誘発させて、大腿前面に疼痛が現れたときに陽性。脊柱菅狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアで陽性となる。
・SLRTの確認
→ヘルニアであればSLRTが陽性になる。
✅脊柱管狭窄症について
症状が進行すると、100mの歩行も困難となり、やむなく休息を取りつつ歩くようになる(間欠性跛行)。
・加齢を背景とした腰椎の変性により背骨の中にある神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで症状を出す疾患(原因として変形脊椎すべり症、変形性脊椎症など)
・徐々に進行するのが特徴。臀部から下肢にかけての痺れや疼痛・脱力・跛行症状。
・重症になると膀胱直腸障害が出現する。
・間欠跛行は脊柱管狭窄症の典型的な徴候として知られている。前屈になると症状が改善するので自転車に乗っているとあまり症状が出ないのも特徴。
参考:腰部脊柱管狭窄症診断サポートツール(医薬ジャーナル社,2006;14)
✅脊柱管狭窄症を疑う問診項目
①太ももからふくらはぎやスネにかけてしびれや痛みがある
②しびれや痛みは暫く歩くと強くなり、休むと楽になる
③しばらく立っているだけで太ももからふくらはぎやすねにかけてしびれたり痛くなる
④前かがみになると、症状は軽快する
【①〜④の項目すべてを満たすと腰部脊柱管狭窄。1つ以上満たす場合は次の⑤〜⑩番目の質問項目で判断する。】
⑤しびれはあるが、痛みはない
⑥しびれや痛みは足の両側にある
⑦両側の裏側にしびれがある
⑧臀部のまわりにしびれがある
⑨臀部の周りにほてりがある
⑩歩くと尿が出そうになる
【⑤〜⑩の2つ以上を満たすと腰部脊柱管狭窄。1つ以下しか満たさない=腰部脊柱管狭窄症ではない。】
↑ 参照:A diagnostic support tool for lumbar spinal stenosis: a self-administered, self-reported history questionnaire.
💡症状の似ている疾患:椎間板ヘルニアについて
・椎間板ヘルニアの症状は比較的急性に出現する。
椎間板ヘルニアは腰痛に加え、下肢痛やしびれが起こる。また重篤な症状として、下肢運動神経麻痺や膀胱直腸障害を来たすこともある。
*前屈で症状が悪化するのが椎間板ヘルニアの特徴。後屈で悪化するのが腰部脊柱管狭窄症の特徴。
・ヘルニアの神経根圧迫が軽い間は下肢の痛みが主体で神経の機能は保たれるが、神経組織の圧迫が強くなるほど、痛みやしびれが強くなり神経の機能障害(筋力低下、知覚障害)が出現する。また、馬尾を強く押すと排尿障害が起こることもある。
✅閉塞性動脈硬化症
高血圧・DMなどの血管リスクの評価。
大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈の触診で触れるかどうか。
ABI<0.9であれば疑う。
怪しければ下肢動脈超音波検査、造影CT・MRIと精査を進める。
追記します。