E/Aとは何か(左室弛緩能)
E/Aを理解する前提として…
◯左室拡張能低下は収縮能低下よりも先に起こる
・左室拡張能は収縮能と異なり、加齢とともに低下する。つまり健常高齢者でも低下している。
・心疾患では収縮能よりも先に拡張能がやられる。左室収縮能が低下している場合は拡張能も低下しているが、収縮能が保たれていても拡張能だけが落ちていることはある。
・収縮能が保たれていても拡張能だけが落ちていても心不全症状が出ること状態を「HFpEF」(=Heart Failure with preserved Ejection Fraction)という。定義としてはEFが50%以上に保たれていているのに労作時呼吸苦などの心不全症状があることをいう。
◯左室弛緩能の評価
・左房から左室への流入血流速度で評価する(心尖長軸もしくは四腔像で関心領域を僧帽弁輪中心に設定してパルスドップラーで記録する)
・正常では流入波形は2相性となる。(E波とA波)
E波(early diastolic filling velocity)は拡張早期に左室の拡張により吸引される血流を意味する。
A波(atrial filling velocity)はE波で流入できなかった血流を左房がの収縮で左室内に送り込まれる血流を意味する。
・E波とA波の最大速度比E/Aは左室弛緩能の指標として用いられる。
・健常者ではE波がA波よりも速いのでE/A>1となる。
・加齢や心疾患などで拡張能が低下するとE波は低下し、それを補うためにA波は高くなる。→結果としてE/Aは小さくなる。E/A<1の状態を弛緩能低下とみなす。
・E/Aは拡張能をエコーで容易に評価できる一方で、加齢でも減少するので必ずしも病的とも言えない。更に、心房細動ではA波が出現しないので評価できない、僧帽弁狭窄症や高度の僧帽弁閉鎖不全などではE波が非常に高くなってしまうのでE/Aもつられて高くなり、正確に拡張能を評価できなくなってしまう。などの欠点も。
また追記します。