僧帽弁狭窄症で1音が亢進、僧帽弁閉鎖不全症で1音が減弱する理由
■僧帽弁狭窄症で1音が亢進する機序
僧帽弁狭窄症(MS)とは、僧帽弁口面積が減少して拡張期に左房から左室への血液の流入が障害される疾患である。心音の1音とは房室弁が閉鎖するときの音であるが、MSにおいては1音が増強するのが特徴的な所見である。
僧帽弁狭窄症のイラスト参照元*1
僧帽弁狭窄症では、拡張期に左房から左室に血液が流れにくくなるので、左房の圧負荷が上昇する。1音は拡張期の終わりに僧帽弁(房室弁)が閉じる時の音であるが、左房圧が高ければ高いほど閉まりにくくなり、左室圧が非常に高くなった段階で突然勢い良く閉まるので1音は大きな音になるのである。(ドアを思いきりバンッとしめるようなイメージ)
■僧帽弁閉鎖不全症(MR)で1音が減弱する機序
僧帽弁閉鎖不全症(MR)で1音が減弱する機序参照元*2
僧帽弁閉鎖不全症とは文字通り、僧帽弁がうまく閉じれない疾患。僧帽弁は前尖と後尖の2つの弁からできているが、これらがピッタリと閉じないために血液が左室から左房へと逆流してしまうのである。1音は僧帽弁(房室弁)が閉じる時の音なので、弁がきちんと閉じない本症では1音が弱くなるのも当然の話である。