肩関節脱臼へのアプローチ@救急外来
肩関節脱臼へのアプローチ+整復
肩関節脱臼の分類
・前方脱臼:肩関節脱臼の95%がこれ。転倒による受傷だと前方脱臼となる。
・後方脱臼;肩関節を90度挙上している状態で前方からの外力により後方脱臼となりうる。またてんかん発作が原因でも後方脱臼となることがある。
・垂直脱臼:非常に稀。肩関節挙上位で腕が頭より上にある状態で上方からの外力が加わると垂直脱臼となる。患者は痛みで腕を下ろせなくなる。
このページでは救急外来で最も多い前方脱臼について
【問診】
・受傷機転:どういう力が加わったのかで肩関節脱臼の分類(前方脱臼、後方脱臼、垂直脱臼なのか)を推測することができる。
・既往歴:肩関節脱臼は習慣性となりうるので今までに繰り返していないか問診する。
(20歳以前に初めて肩関節脱臼をした場合は90%で反復性の脱臼を経験し、40歳以上で初めて肩関節脱臼を経験する場合は14%しか再発しないとのデータもある。)
【身体所見】
圧痛部位の確認:
視診・触診:
上腕骨骨頭の脱臼により肩峰の下が空虚になる。また、上腕骨骨頭が押すことにより三角胸筋溝は膨隆する。
参考画像:肩峰、上腕骨頭、上腕骨の位置関係
画像引用http://judo-akimoto.com/dislocation3.htm
感覚神経障害の有無:
腋窩神経麻痺が約1%に合併する。三角筋上の感覚神経麻痺が起こる。
【レントゲン】:整復前のレントゲン写真は証拠になるので必ず取る(2方向)
肩関節正面像
→肩甲骨関節窩と上腕骨頭が平行になっていないことを確認
肩関節スカプラY像
→正常なら肩甲骨の肩峰、烏口突起、肩甲骨体部が形成するY字の中心に上腕骨頭が存在するが、前方脱臼なら前方に、後方脱臼なら後方に骨頭がシフトしている。
【治療】
様々な整復法があるがここでは標準的なstimson法をとりあえず紹介。
患者に腹臥位になってもらい、肩の力を抜かせて手首に2−3kgの重りをつける。無理のない範囲内で腕の内旋、外旋を繰り返す。少し時間はかかるが軟部組織に優しい整復方法。これでしばらくやっても整復できない場合は整形外科にコンサル。
マジックテープを使って重りをつけると簡易で便利な様子。
参考画像:整形外科医のブログ : Stimson法
患者の痛みの訴えがなくなり、関節可動域も回復していれば三角巾で腕をつり、腕と胸を整復した状態で固定する。必要に応じて鎮痛薬を処方し、整形外科でフォローしてもらう。
また追記、編集します…。