頭痛の鑑別
くも膜下出血
突然発症、人生最悪の頭痛、嘔気・嘔吐、項部硬直
脳出血
突然発症、意識障害、高血圧の既往、神経学的所見
髄膜炎・脳炎
徐々に強くなる頭痛、発熱、嘔気、意識障害、項部硬直、精神的変化(脳炎)
椎骨動脈解離・内径動脈解離
突然発症、頚部痛、首の回旋などをきっかけに生じうる、眼球運動障害、片麻痺
占拠性病変(膿瘍、腫瘍、血腫)
癌の既往、進行性に増悪する、局所神経的所見(無いことも)、眼底乳頭浮腫
緑内障発作
視力障害、嘔吐、片側の頭痛 、瞳孔散大、結膜充血
高血圧性脳症
意識障害、心不全状態、視力障害、拡張期血圧120以上、うっ血乳頭
→ 軽度の高血圧で起こることはない。
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
平均発症年齢70歳、発熱、視野障害、複視、頸部〜肩の痛み、側頭動脈の圧痛
【診断のポイント】
・大動脈またはその枝の動脈に起こる肉芽腫性動脈炎で頭の外側の側頭動脈がしばしば傷害される
・発熱を伴うことが多い。炎症反応上昇も併せて見られる
・頭痛の特徴は拍動性、片側性の頭痛、夜間に増強
・触診で拡張した側頭動脈を触れる
・半数の患者で食事の咀嚼時に顎の痛み。特徴的な症状
・リウマチ性多発筋痛症を50%に合併
・眼症状の出現(一過性黒内障、視力障害)
・確定診断は側頭動脈の生検。gold standard
・治療はプレドニン40-60mg/dayで開始
内頸動脈海綿静脈洞瘻
片側の頭痛
目の充血
拍動性頭痛
眼窩周囲の血管雑音
眼球運動障害
筋緊張性頭痛
肩こり、頭痛は長く持続する、締め付けられる頭痛(非拍動性)、頭頸部の両側性頭痛・圧痛、僧帽筋の緊張
大前提として、他の疾患が否定されていることが重要。どうしようもない痛み、痛くて動けないというのは筋緊張性頭痛らしくない。
【診断基準】稀発反復性緊張型頭痛
・頻度が稀(一ヶ月に1日未満の頻度が10回以上)
・頭痛は30分〜7日間持続する
・次の2つ以上を満たす(両側性、性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽度〜中等度、歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない)
・次の両方を満たす(悪心や嘔吐はない、光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ)
・それ以外の疾患が否定されている
筋緊張型頭痛にはこの他に頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛や、慢性緊張型頭痛などがあり、別途診断基準が有る(ここでは割愛)。
偏頭痛
拍動性頭痛、嘔気・嘔吐、光過敏、音過敏、閃輝暗点
【偏頭痛の診断基準】
A:B-Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B:持続時間が4−72時間(未治療の場合)
C:次の2つ以上の項目を満たす(片側性、拍動性、中等度〜重度の頭痛、日常的な動作(歩行など)により 頭痛が増悪する
D:頭痛発作中に次の1項目以上を満たす(悪心または嘔吐、光過敏および音過敏)
E:その他の疾患によらない
群発頭痛
発作性の片側の激しい痛み、夜間に発症、頭を叩く 、目の充血・涙、疼痛側の顔面発汗
【群発頭痛の診断基準】
A:B-Dを満たす発作が5回以上ある
B:未治療で一側性の重度〜極めて重度の頭痛が眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に15分〜180分持続する
C:頭痛と同側に少なくとも次の一項目を伴なう(結膜充血または流涙、鼻閉または鼻漏、眼瞼浮腫、前頭部および顔面の発汗、縮瞳または眼瞼下垂、落ち着きのない様子・あるいは興奮した様子)
D:発作の頻度は1日に0.5回〜8回
E:その他の疾患が除外されている
薬物乱用性頭痛
頭痛の既往のある患者に発症
頓服用に処方されている鎮痛薬を三ヶ月以上乱用している
★一ヶ月に10日以上の使用が3ヶ月以上続くと、乱用状態と判断される
【薬物乱用性頭痛の診断基準】
A:頭痛は1ヶ月に15日以上存在し、CおよびDを満たす
B:「急性の物質使用または暴露による頭痛」に示す以外の薬物を3ヶ月を超えて定期的に乱用している。急性の物質使用または暴露による頭痛とは→急性の物質使用または曝露による頭痛(参考)
C:頭痛は薬物の乱用のある間に出現もしくは著明に悪化する
D:乱用薬物の使用中止後、2ヶ月以内に頭痛が消失、または以前のパターンに戻る
副鼻腔性頭痛
後鼻漏
膿性鼻汁
先行する風邪
前頭部・頬部の圧痛
前かがみで増悪
帯状疱疹
片側のピリピリした痛み
免疫不全患者(高齢者など)
1〜3日後の小円形の紅斑、小水泡
◯頭痛鑑別のためのキーワード
・突然発症:
クモ膜下出血、脳出血、椎骨動脈解離など
徐々に増悪なら髄膜炎、脳腫瘍など
・意識障害:
髄膜炎・脳炎、高血圧性脳症、脳出血など
・人生最悪の頭痛:
くも膜下出血、髄膜炎など
くも膜下出血は突然最強の頭痛。髄膜炎は最初は軽いが徐々に最悪の頭痛に。
・片側の頭痛:
緑内障発作、内頸動脈海綿静脈洞瘻、群発頭痛、帯状疱疹(ピリピリした痛み)など
・拍動性の頭痛:
内頸動脈海綿静脈洞瘻、偏頭痛など
・嘔気・嘔吐:
くも膜下出血、髄膜炎・脳炎、緑内障発作、偏頭痛など。
髄膜刺激徴候で起こるがそれ以外にも結構起こる。
・高血圧の既往:
脳出血、高血圧性脳症(拡張期120以上)など
・首を回旋させた時の痛み
椎骨動脈解離・内径動脈解離など
・肩こりがある:
筋緊張性頭痛など
・頸部痛:
椎骨動脈解離・内径動脈解離、側頭動脈炎、筋緊張性頭痛など
・発熱:
髄膜炎・脳炎、側頭動脈炎、脳膿瘍など
・前頭部・頬部の圧痛
副鼻腔性頭痛など(前かがみで痛みは強くなることが多い)
・神経学的所見:
脳出血、椎骨動脈解離・内径動脈解離など
項部硬直:
くも膜下出血、髄膜炎・脳炎など
→項部硬直は発症してすぐに病院に来た場合などは認めないことも多い。あくまで参考所見の1つにする。
眼の異常:
緑内障発作(視力障害)、側頭動脈炎(視野障害、複視)、内頸動脈海綿静脈洞瘻(眼球運動障害)など)
眼底乳頭浮腫:
占拠性病変、高血圧性脳症など
瞳孔散大
緑内障発作など
結膜の充血
緑内障発作、内頸動脈海綿静脈洞瘻、群発頭痛など