主訴:頭痛の鑑別診断
頭痛の鑑別
✅主訴:頭痛で鑑別となる疾患
・致死的頭痛
くも膜下出血、脳出血、髄膜炎・脳炎、椎骨動脈解離、占拠性病変(腫瘍・血腫など)、静脈洞血栓症、側頭動脈炎、緑内障発作、低髄圧症候群、内頸動脈海綿静脈洞瘻、下垂体卒中、特発性頭蓋内圧亢進症
・よくある頭痛
偏頭痛、筋緊張性頭痛、発熱に伴う頭痛、薬剤性頭痛(離脱による頭痛)、群発頭痛、副鼻腔性頭痛、神経痛(三叉神経痛など)、頚椎症、帯状疱疹、睡眠時無呼吸症候群、可逆性脳血管攣縮症候群
✅問診のキーワード)
・突然発症→クモ膜下出血、脳出血、椎骨動脈解離など。徐々に増悪→髄膜炎、脳腫瘍など
・人生最悪レベルの頭痛か→くも膜下出血、髄膜炎など
・片側の頭痛→緑内障発作、内頸動脈海綿静脈洞瘻、群発頭痛、帯状疱疹(ピリピリした痛み)など
・拍動性の頭痛→偏頭痛、内頸動脈海綿静脈洞瘻など
・嘔気・嘔吐→くも膜下出血、髄膜炎・脳炎、緑内障発作、偏頭痛など。
・高血圧の既往→脳出血、高血圧性脳症(拡張期120以上)など
・首を回旋させた時の痛み→椎骨動脈解離・内径動脈解離など
・肩こりの有無→筋緊張性頭痛など
・頸部痛→椎骨動脈解離・内頸動脈解離、側頭動脈炎、筋緊張性頭痛など
✅身体所見)
・意識障害の有無→髄膜炎・脳炎、高血圧性脳症、脳出血など
・発熱→髄膜炎・脳炎、側頭動脈炎、脳膿瘍など
・前頭部・頬部の圧痛→副鼻腔性頭痛など(前かがみで痛みは強くなることが多い)
・側頭動脈の怒張・圧痛→側頭動脈炎症
・神経学的所見の有無→脳出血、椎骨動脈解離・内頸動脈解離など
・ 項部硬直:くも膜下出血、髄膜炎・脳炎など(項部硬直は発症してすぐに病院に来た場合などは認めないことも多い。あくまで参考所見の1つにする。)
・眼の異常→緑内障発作(視力障害)、側頭動脈炎(視野障害、複視)、内頸動脈海綿静脈洞瘻(眼球運動障害)など)
・眼底乳頭浮腫→占拠性病変、高血圧性脳症など
・瞳孔散大→緑内障発作など
・結膜の充血→緑内障発作、内頸動脈海綿静脈洞瘻、群発頭痛など
✅各疾患の鑑別キーワード
⭕くも膜下出血
突然発症、人生最悪の頭痛、嘔気・嘔吐、項部硬直
⭕脳出血
突然発症、意識障害、高血圧の既往、神経学的所見
⭕髄膜炎・脳炎
徐々に強くなる頭痛、発熱、嘔気、意識障害、項部硬直、精神的変化(脳炎)
⭕椎骨動脈解離・内頸動脈解離
突然発症、頚部痛、首の回旋などをきっかけに生じうる、眼球運動障害、片麻痺
⭕占拠性病変(膿瘍、腫瘍、血腫)
癌の既往、進行性に増悪する、局所神経的所見(無いことも)、眼底乳頭浮腫
⭕緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)
(診断基準は以下の2つを満たすもの)
①眼痛、吐気もしくは嘔吐、光輪視を伴う霧視の前駆症状のうち2つ以上を有する。
②眼圧上昇(>21mmHg)と、結膜充血、角膜浮腫、中等度散瞳および対光反応消失、浅前房のうち3つ以上の所見を認める。
隅角の狭い眼に散瞳が起きると,隅角がブロックされ房水が流れていかなくなり眼圧が上昇する=緑内障発作
緑内障発作の一例
眼科コンサルト。20%マンニトール®1回1.0-3.0g/kgを30〜45分で点滴静注
⭕ 高血圧性脳症
意識障害、心不全状態、視力障害、拡張期血圧120以上、うっ血乳頭
→ 軽度の高血圧で起こることはない。
⭕側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
平均発症年齢70歳、発熱、視野障害、複視、頸部〜肩の痛み(咀嚼時の痛み)、側頭動脈の圧痛
側頭動脈炎の一例(https://www.med.jrc.or.jp/hospital/clinic/tabid/125/Default.aspx)
【側頭動脈炎診断のポイント】
・大動脈またはその枝の動脈に起こる肉芽腫性動脈炎で頭の外側の側頭動脈がしばしば傷害される
・発熱を伴うことが多い。炎症反応上昇も併せて見られる
・頭痛の特徴は拍動性、片側性の頭痛、夜間に増強
・触診で拡張した側頭動脈を触れる
・半数の患者で食事の咀嚼時に顎の痛み。特徴的な症状
・リウマチ性多発筋痛症を50%に合併
・眼症状の出現(一過性黒内障、視力障害)
・確定診断は側頭動脈の生検。gold standard
・治療はプレドニン40-60mg/dayで開始
筋緊張性頭痛
肩こり、頭痛は長く持続する、締め付けられる頭痛(非拍動性)、頭頸部の両側性頭痛・圧痛、僧帽筋の緊張
大前提として、他の疾患が否定されていることが重要。どうしようもない痛み、痛くて動けないというのは筋緊張性頭痛らしくない。
【診断基準】稀発反復性緊張型頭痛
・頻度が稀(一ヶ月に1日未満の頻度が10回以上)
・頭痛は30分〜7日間持続する
・次の2つ以上を満たす(両側性、性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽度〜中等度、歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない)
・次の両方を満たす(悪心や嘔吐はない、光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ)
・それ以外の疾患が否定されている
筋緊張型頭痛にはこの他に頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛や、慢性緊張型頭痛などがあり、別途診断基準が有る(ここでは割愛)。
⭕偏頭痛
拍動性頭痛、嘔気・嘔吐、光過敏、音過敏、閃輝暗点
・偏頭痛が疑わしくても、二次性頭痛の有無の確認が重要(クモ膜下出血、髄膜炎、脳血管障害等)
・急性期の治療としてはトリプタン製剤(イミグラン®50mgなど。効果不十分なら2時間以上あけて1日4回まで。NSAIDsとの併用も可能)
・軽症〜中等度の偏頭痛発作ではNSAIDsも治療効果が高く第一選択になりうる。
・片頭痛の吐き気に対してはナウゼリン・プリンペランも有用
・トリプタンやNSAIDsだけでは日常生活に支障が出る場合は予防療法を検討。
⭕群発頭痛
発作性の片側の激しい痛み、夜間に発症、頭を叩く 、目の充血・涙、疼痛側の顔面発汗
【群発頭痛の診断基準】
A:B-Dを満たす発作が5回以上ある
B:未治療で一側性の重度〜極めて重度の頭痛が眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に15分〜180分持続する
C:頭痛と同側に少なくとも次の一項目を伴なう(結膜充血または流涙、鼻閉または鼻漏、眼瞼浮腫、前頭部・顔面の発汗、縮瞳または眼瞼下垂、落ち着きのない様子)
D:発作の頻度は1日に0.5回〜8回
E:その他の疾患が除外されている
⭕薬物乱用性頭痛
頭痛の既往のある患者に発症
頓服用に処方されている鎮痛薬を三ヶ月以上乱用している
★一ヶ月に10日以上の使用が3ヶ月以上続くと、乱用状態と判断される
【薬物乱用性頭痛の診断基準】
A:頭痛は1ヶ月に15日以上存在し、CおよびDを満たす
B:「急性の物質使用または暴露による頭痛」に示す以外の薬物を3ヶ月を超えて定期的に乱用している。急性の物質使用または暴露による頭痛とは→急性の物質使用または曝露による頭痛(参考)
C:頭痛は薬物の乱用のある間に出現もしくは著明に悪化する
D:乱用薬物の使用中止後、2ヶ月以内に頭痛が消失、または以前のパターンに戻る
⭕副鼻腔性頭痛
後鼻漏
膿性鼻汁
先行する風邪
前頭部・頬部の圧痛
前かがみで増悪
⭕帯状疱疹
片側のピリピリした痛み
免疫不全患者(高齢者など)
1〜3日後の小円形の紅斑、小水泡
一般的に臨床診断できるが、虫刺されや単純ヘルペスなどの疾患と鑑別が必要になることもある。単純ヘルペスとの鑑別は抗VZVモノクローナル抗体によるウィルス抗原の検出を行う。血清診断ではペア血清で血清抗体価の上昇が診断の一助になる。
帯状疱疹へのアプローチ(メモ) - つねぴーblog@内科専門医
病変が広範囲だったり免疫不全患者であれば入院にてアシクロビル点滴。軽症ならバルトレックス1000mg1日3回内服。
三叉神経領域に波及していると中枢神経に波及するリスクが高く注意。
⭕内頸動脈海綿静脈洞瘻:
片側の頭痛、目の充血、拍動性頭痛、眼窩周囲の血管雑音、眼球運動障害
殆どが外傷後。MRA→血管造影で診断
⭕静脈洞血栓症
静脈洞が血栓で閉塞することにより、血液が頭蓋外に出て行きにくくなり、頭蓋内圧亢進、静脈性脳梗塞、脳出血、けいれんなどを起こす。
脳卒中の0.5〜1%程度と稀ではあるが若年者で起こり、頭痛は90%に生じる。
進行すれば麻痺が出るのでわかりやすいが、そこで診断するのは遅い。若年者における急性の精神症状などの鑑別として静脈洞血栓症は大事。
原因としては①血流の停滞,②静脈壁の障害,③血液凝固能の亢進が種々に絡み合う.
(画像所見)
・単純CTで血栓が見える。静脈洞や皮質静脈の中の血栓が高吸収値を示すhyperdense vein。大脳鎌よりも高吸収であれば静脈洞血栓症を疑う1)。
・造影CTでは、静脈の造影効果が欠損する。empty deltaあるいはempty triangleが有名。三角形の増強効果の中央に造影欠損を伴う像となる。特異度は高いが30%程度にしか認められない。
⭕頭頚部血管障害による頭痛
また追記します。