SAM(僧帽弁の収縮期前方運動)とは何か
閉塞性肥大型心筋症での僧帽弁収縮期前方運動(=SAM)はどのようなメカニズムで起こるのだろうか。
肥大型心筋症では心室中隔が肥厚することにより、左室流出路が狭くなる。するとそこを通過する血流はventuri効果の影響を受け、僧帽弁の前尖を心室中隔に引き寄せる。これがSAMが起こる理由である。
venturi効果とは…
流量が一定の時に断面積が狭くなると流速が速くなるというもの。つまり血液の流出路(=断面積)が狭くなることにより、血流も速くなる。流速が早くなると圧力が低くなることはベルヌーイの定理より導かれる。圧力が低いというのは陰圧の状態であるので周りのものを引っ張る力となるのである。
■僧帽弁のMモードエコーについて復習
Mモードエコーではエコーのプローブを右室前壁側からあてる。
下の図がわかりやすいが、プローブ側から右室前壁、心室中隔、僧帽弁(前尖、後尖)、左心室後壁という順番に並んでいる。
閉塞性肥大型心筋症ではこの前尖が心室中隔側に異常に引っ張られてしまうのである。
他に閉塞性肥大型心筋症に重要な所見としては、僧帽弁前尖と心室中隔がくっついた後に、大動脈弁が一時的に閉鎖してしまうことである。また、閉まるべき僧帽弁がうまく閉まらないので僧帽弁逆流も合併する。
上図はhttp://square.umin.ac.jp/kennsa/echocardiography/echo_basictech/basic_section/pslvl_mv.htmlより引用
■実際のMモードエコーによるSAM
収縮期に僧帽弁前尖が心室中隔側に引っ張られているのが確認できる。
上図はhttp://www.m.ehime-u.ac.jp/school/int.med2/echostu.htmlより引用