つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

DDR(僧帽弁前尖後退速度)とは何か

Mモードエコーで僧帽弁狭窄症を観察するとDDRという所見が得られる。

(DDRとはdiastolic descent rate(DDR)の事で、僧帽弁前尖後退速度の意味)

 

Mモードエコーを理解するには僧帽弁の構造とMモードエコーの方向を頭に入れて置かなければならない。まず、僧帽弁は二尖弁であり、前尖と後尖に分けられる。エコーのプローブを当てる方向は右室側から左室・左房の方向に向かってあてられる(下のイラストでは上川側にあるのが右心、下側にあるのが左心)。

 

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http://www.us-kensahou-seminar.net/muse4/ch2/index.htmlより引用

 

Mモードエコーの図においてパッと見では何がなんだかわかりづらいが、一つ一つ何を意味しているのか把握する必要がある。下の左側のイラストはMモードエコーのデフォルメであるが、上から順に右室の前壁、心室中隔がありその後、僧帽弁があり、最後に左室後壁という順番に並んでいる(エコーのプローブから近い順)。

 

 

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http://square.umin.ac.jp/kennsa/echocardiography/echo_basictech/basic_section/pslvl_mv.htmlより引用

 

さて、一番大事なのは前尖と後尖がどういう形をしているかということである。

上のイラストは正常のMモードエコーである。前尖と後尖が閉じている時と開いている時がある(上の図の記号で言うと前尖がDEACで後尖がDFCの時)。

前尖と後尖がくっついている時というのはつまり僧帽弁が閉じて血液が大動脈側に流れている時なので収縮期に相当する。一方で、前尖と後尖が開いているときは僧帽弁が開いて心房から心室に血液が流れている時であるので拡張期に相当する。

 

ただ、拡張期の僧帽弁の動きを見ていると、”一度閉まりかけて(F点あたり)また少し開いて(A点あたり)また閉じる(最後のC点)”という形をしている。これは拡張期は心室が開くことによって心房からの血液を引っ張ってくる時期と、心房が収縮することによって心室側に血液を送り出す時期の2つに別れているということを意味している。またF点はちょうどその2つの時期の切り替えの時期に相当しており、F点でいったん閉じかけるが、心房が頑張って収縮して最後に心房内に残っている血液を何とか心室に送り出すというイメージ。

 

そして、DDR(僧帽弁前尖後退速度)というのは上の図のEFの傾きのことなのである。

繰り返しになるが、上の図はあくまで正常図。DDRが低下したMモードエコーの図というのは下図のようになる。

 

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http://www.geocities.jp/study_nasubi/c/c14.htmlより画像引用

実際に前尖の傾きがゆるやかになっているのがわかる。

 

なぜこのようにDDRが低下するのであろうか。それは僧帽弁狭窄症では心房から心室への出口が狭いために左房圧が上昇しているからである。血液が多少心室に移動したところで左房内圧は下がらずに高いままであり、前尖が閉じようと思うにもなかなか閉じれないのである。それで前尖の傾きが緩やかになり、DDRの低下という所見になる。