3度房室ブロックで大砲音が聞こえる理由
3度(完全)房室ブロックで大砲音が聞こえる機序
大砲音とは心音のI音がとても強く聞こえることをいう。
(I音は僧帽弁や三尖弁が閉鎖するときに聴取される音)
房室ブロックとは心房から心室への興奮伝導が遅延する疾患であるが、完全房室ブロックではその伝導が完全に途絶し、心房と心室が完全にバラバラに収縮してしまう。
左心房が収縮して僧帽弁が閉じかけているときに左心室が収縮し始めれば、僧帽弁はゆっくりと閉じる。一方で、左心房が収縮した直後(つまり僧帽弁が大きくあいてる状態)に左心室が収縮を始めると僧帽弁は大きくあいた状態から勢いよく閉まることになるのでとても大きな音がするのである。この心音を大砲音と呼ぶ。大砲音は心房と心室の収縮するタイミングによって発生が決まるので毎回聞こえるわけではない。
ちなみに、1度房室ブロックではI音は小さくなる。これは心房が収縮してからしばらく遅れて心室が収縮するので、僧帽弁が大きく開いているときではなく、やや閉じかけの状態で心室が収縮するので僧帽弁は小さく閉じるので音も小さくなる。僧帽弁が閉じるのをドアが閉じると同じものと考えればイメージがわきやすいと思う。
なお、完全房室ブロックだけでなく、房室解離でもタイミングがあえば大砲音は聴取される。