心電図波形とペースメーカーのモードの対応
ペースメーカーのペーシングモードについて説明
ペースメーカーは洞結節などの刺激伝導系の代わりとして心臓に適切な電気刺激を与え続けて調律をコントロールするものである。ペースメーカーには三文字のコードで設定機能が表示されている。
◯◯◯型という様に記載されている場合
・1番目の文字がペーシング、つまり刺激する心臓の部位を表している。Aは心房、Vは心室、Dは心房および心室の両方
・2番目の文字がセンシング、つまり感知される心臓の部位を表している。Aは心房、Vはは心室、Dは心房及び心室の両方、Oはセンシング機能のないことを意味する
・3番目の文字が自己波形が出た時にどう対応するかを表したものである。Iは抑制、Tは同期、Dは両方、Oは機能なしを意味している。抑制というのは自己心拍がある時はペーシングを抑制するという意味。同期というのはセンシングで自己心拍を感知して放電するという意味。
最も多く用いられるのはVVI、AAI、DDD(もしくはDDI)である。これらの違いについて理解しておけばとりあえずはOK。
例として・・・
・AAIモード
心房電極を介してペーシングとセンシングを行うものであり、心房を人工的な刺激で拍動させて、その後のQRSは自己の正常伝導系を介して興奮したものである。つまり房室伝導障害がない洞不全症候群が良い適応となる。メリットとしては心房、心室の生理的順応性が保たれるので心拍出量の低下がない点。デメリットとしては植え込み後に房室ブロックや心房細動が起こった場合は対応できないため再度リードを一本追加で植え込む手術をしなければならない。
・VVIモード
心室電極を介してペーシングとセンシングを行うもの。P波は自己の洞調律でQRSはペースメーカー刺激で興奮させている状態である。すべての徐脈性不整脈に適応がある。シングルチャンバーなので電池の消耗が少ないのがメリット。
一方で、心房収縮と心室収縮の生理的順次性が保たれないのでDDDモードに比べて心拍出量は20%低下すると言われている。また、心室からの刺激が逆行性に心房に伝わって心拍出量に悪影響を与えて倦怠感などの症状が出現することもある(ペースメーカー症候群)。
・DDDモード
心房と心室それぞれに1本ずつ電極を植え込む。心房の自己P波をセンスできない場合は心房ペーシングが行われ、心室の自己R波をセンスできない場合は心室ペーシングが行われる。メリットとしては心房と心室の生理的順次性を保つことができる。また、洞不全症候群や房室ブロックを合併したときにも対応することができる。デメリットとしては電極が2本必要なので電池の消耗が早い点である。
・DDIモード
心房電極と心室電極の両方でペーシングとセンシングを行うもので、P波が無ければ心房電極がペーシングを行い、R波が無ければ心室電極がペーシングを自動的に行うという状態である。
◯心電図波形とモードとの対応
心電図波形を見た時に、どのモードに設定するか
例1:徐脈性心房細動
→VVIモード。
心房細動は文字通り心房が細かく震えてしまっているので心房のセンスはできないしペースしても仕方がない。よって心室でセンス・ペースする。
例2:洞不全症候群
洞結節の問題で自己P波が規則正しく出ていない状態である。よって心房のセンスとペースができるAAIモードの適応となる。また、DDDモードにしておくと将来房室ブロックが起こった時に対応できるので無難かもしれない。
→AAIもしくはDDDモード。
例3:完全房室ブロック
完全房室ブロックでは心房と心室との伝達が完全に障害されてしまっている状態。自己P波と自己QRSはそれぞれバラバラに出ている。自己のP波をセンスしたらペースメーカーで心室をペースさせるモードが最適。
→DDDモード