せん妄に対するハロペリドールの使い方
◯ハロペリドールの使い方についてまとめ
・内服、筋注、静注どれでも使えるので便利。
(内服ができればリスパダールなど他の選択肢があるが、内服もしてくれない患者においては点滴・筋注投与可能なハロペリドールは強い)
・暴れてて静脈ルートも取れない場合は物理的に押さえつけて筋注などが可能。
・鎮静効果はあまり強くないがせん妄にはfirst choice!!(幻覚など認知機能障害を改善させることができる)。
・高齢でもせん妄のPtはセレネースに強いため、一晩で3A(15mg)ぐらい使われてしまうことも稀ではない。が、高齢者は0.5A(2.5mg)ぐらいから開始の方が無難。
・全量投与後15分で効果出現。効果ない場合は同量もしくは倍量投与。(間隔は30分あける)
・呼吸抑制もまずないのでそこまで怖がることはない(勿論モニターしてたらよい)
・重篤な心疾患は要注意とはされている(QTc延長)。
*ただし、35mg(7A)/日までの静脈内投与ではTorsade de pointesとの関連は稀 (Sharma ND)
・ルートがあるのならば、副作用が少なく即効性もあるためできれば静注がbest。
・パーキンソニズム/悪性症候群等に注意
☆即効性>持続性→セレネース1A+生食20mlを側管より静注(ワンショット)
☆即効性<持続性→セレネース1A+生食100ccを点滴静注(30分かけて)
Q、ハロペリドール使っても全然寝てくれません!
ハロペリドールはせん妄による認知機能障害を改善させる薬であって、催眠作用は弱い。寝かせたいのなら催眠作用のある抗精神病薬やベンゾジアゼピン系の併用などを考慮する。
Q,ハロペリドールの上限量はどれだけか?
統合失調症においてはハロペリドール10mgを超えて使用しても治療効果は高まらず、有害事象の発症リスクのみ上がることが知られている。
よって、せん妄においても10mgを事実上の上限=他の手を考える。
Q,ハロペリドール10mgでも効果がない場合はどうれれば…?
10mgより更に上乗せしても効果期待できず有害事象が増えていきそう。
精神運動興奮を抑える意味で鎮静が必要な場合にはベンゾジアゼピン系(ドルミカム®、(ミダゾラム)やフルニトラゼパム(サイレース®、ロヒプノール®)などを併用する。
・フルニトラゼパム(ロヒプノール®)0.5A〜1A+生理食塩水100ml(1−2時間かけて)
・ミダゾラム1A(10mg)(ドルミカム®)0.5A〜1A+生理食塩水100 ml
注意1)
フルニトラゼパムもミダゾラムも呼吸抑制のリスクがあるので注意。ちなみに呼吸抑制の頻度としてはフルニトラゼパム17%VSミダゾラム4%との報告がある。鎮静効果はほぼ同等のためミダゾラムのほうが呼吸抑制少ないので安全とも言える。もちろん、万が一に備えてモニター管理でSpO2測定してアンビューマスク用意しておけば心強い。
注意2)ベンゾジアゼピン系と非定型抗精神病は管理上は混合注射しないほうが良いが、臨床上はしばしば混合注射して用いられる。
Q、ハロペリドール効かない時、ベンゾジアゼピン系以外で何かありませんか?
フェノチアジン系に切り替える(クロルプロマジン(コントミン®)1A(10mg)+生理食塩水100ml 1時間以上かけて投与
クロルプロマジンは抗精神病薬で認知機能改善作用に加えて鎮静作用もあるので寝てくれるのを期待できる。コントミンの名前の由来はコンコンと眠るだとか。