心筋梗塞と大動脈解離の鑑別メモ
突然の胸痛患者が来た時に最初に想起したいのは心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓。
心筋梗塞と大動脈解離の鑑別メモ
◯心筋梗塞
・急な発症だが大動脈解離に比べるとピークに達するまでの時間は長い
・胸部の圧迫感、押されるような痛み、絞扼感
・労作などで症状増悪(酸素需要供給のミスマッチ)
・痛みはピンポイントで指す事ができずに頸部、歯、顎、腕、肩などに放散する。
・冷感、呼吸困難、嘔気などを伴なう
・まず第一に心電図でST変化みる、同時に採血でトロポニン、CK、CK-MB評価
背部の痛みを伴なう、血圧が著しく高い、血圧左右差(20以上の差)、右冠動脈閉塞疑い等の場合は、大動脈解離の否定が必要(→単純・造影CT)
◯大動脈解離
・発症のピークは男女とも70歳代と高齢者に多い。
・急激な胸痛、腰背部痛(心筋梗塞よりも症状のピークが早い)
・引き裂かれるような痛み、鋭い痛み(一方、心筋梗塞が圧迫感・絞扼感)
・解離が及んでいる範囲に痛み、移動する痛み
・解離が鑑別に入る場合は必ず血圧の左右差を取る。(20mmHg以上の差があれば解離を疑う。が、血圧の左右差は鎖骨下動脈を巻き込むかどうかで決まるため頻度は20%程度と低い)
・検査ではDダイマーの測定が除外に有用。(500ng/mlをカットオフ値とすると、特異度47%、感度97%と除外に有用)。
・解離が大動脈の分岐部の腎動脈を巻き込んでしまうと血尿が出るので、「腰痛+血尿=尿管結石」と誤診してしまうことがあるので要注意。
・心筋虚血は約10%に合併するため、心電図に引きづられて解離が見逃されて抗凝固療法・心臓カテーテルが優先されないように注意。大動脈解離において正常心電図は3割ほどと言われており、何らかの非特異的所見を呈することが多い。スタンフォードA型ではRCA領域の心筋梗塞(下壁梗塞=Ⅱ、Ⅲ、aVFのST変化)を合併することがあるが、心筋梗塞の診断は大動脈解離の除外にはならない。
・胸部レントゲンで縦隔陰影の拡大やカルシウムサインも重要
参考:大動脈解離の簡易スクリーニング 、大動脈解離のカルシウムサインとは(画像)
また追記します。