アテローム性、心原性、ラクナ脳梗塞の鑑別
アテローム性、心原性、ラクナ脳梗塞の違い
イラスト参照:脳卒中は減ったのか? (3)脳梗塞は減ったのか?: 毎日がしあわせ
頻度としては心原性、アテローム性、ラクナ梗塞いずれも同等。
が、重症度としては心原性>アテローム性>ラクナ梗塞の順。
それぞれの脳梗塞のポイントを紹介
*皮質症候、ラクナ症候群に関してはこちら参照→
心原性脳塞栓症:心房細動や再起の心筋梗塞、機械弁などが原因になる。
塞栓子はフィブリン主体の血栓。
突然発症し、症状は突発的に完成する。
心原性脳梗塞では突発的に血管閉塞が起こるので、高度の虚血となり症状も突然完成するが、すぐに血栓を溶かすことができれば症状も劇的に改善を見込める。血栓溶解療法の良い適応。
TIAが前駆することはまれ。
原因の7〜8割は高齢者の非弁膜症性心房細動である。
重度の意識障害や失語などの大脳皮質症状を伴うことが多い。
画像所見:境界明瞭な皮質枝領域梗塞、出血性梗塞、脳浮腫
脳血管所見:主幹動脈閉塞(または再開通所見)
血液検査:凝固線溶系の上昇あり
アテローム血栓性脳梗塞:
頭蓋内外の脳主幹動脈のアテローム硬化を基盤として起こる。
(頭蓋内では内頚動脈サイフォン部、中大脳動脈水平部、脳底動脈主幹部などに起こりやすく、頭蓋外では頸動脈分岐部、椎骨動脈起始部で起こりやすい)
病変部位は境界領域に多い。
症状は階段状に徐々に進行する。
TIAが前駆することが多い(20〜30%)
塞栓子はアテロームプラークに生じた血小板主体の血栓
既往歴としては高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙など
画像所見としては穿通枝または皮質枝領域梗塞
脳血管所見としては主幹動脈の狭窄・閉塞
心電図や心エコーでは異常認めないことも
採血で血小板、凝固線溶系上昇
ラクナ梗塞:
中大脳動脈や脳底動脈穿通枝が閉塞して起こる1.5cm以下の梗塞
症状は急速に進行することもあれば階段状に徐々にのこともある。
(夜間睡眠時や起床時に発症することも多い)
リスクとしては高血圧、糖尿病、脱水など
塞栓子はリポヒアリン変性。
症状は軽度で純粋な片麻痺などが最も多い。意識障害や大脳皮質症状を伴うことはない。
画像所見:穿通枝領域の1.5cm以下の梗塞
脳血管所見:基本的には主幹動脈に病変認めず
その他:
脳動脈解離、もやもや病、奇異性脳塞栓症(静脈血栓が右左シャントを通過して脳梗塞を起こす)、抗リン脂質抗体症候群、その他原因不明のもの
また追記、更新します。