吐下血患者の出血量をHb値で判断してはならないという話
吐血、下血患者の採血で血中Hb(g/dl)は重要であるが、その値に振り回されてはならない。
ヘモグロビン濃度はあくまで濃度なので、急性に出血したばかりの患者では突然減少するものではない。つまり、吐血患者を採血してHbが10g/dlほどあっても実は大量出血でその後出血性ショックになる可能性もあれば、Hbが4−5g/dl程度しかなくてもそれが慢性の経過であればバイタルも安定していて緊急性がさほどないこともある。Hbも緊急性を判断するための重要な指標の1つであるが、それよりもどのぐらいのスピードで貧血が進行しているのか、血液が失われているのかが重要である。
下血に対して緊急内視鏡の適応のスコアとしてblatchford scoreというものがある。
これではHb以外にも血圧、BUN値、脈拍、既往歴、失神の有無などが評価項目として挙げられている。
【Blatchford Score】lancet.2000 oct 14;356(9238);1318-21
◯収縮期血圧(出血量が多いと当然血圧は下がる)
100〜109mmHg:1点、90-99mmHg;2点、90mmHg未満;3点
◯血中尿素窒素(BUN)(出血すると血液のタンパク成分が消化液で酸化されてBUNが産生される)
18.2〜22.4;2点、22.4〜28;3点、28〜70;4点、70以上;6点
◯Hb(男)
;12.0〜12.9;1点、10-11.9点:3点、10点以下:6点
◯Hb(女)
10-11.9:1点、10以下;6点
◯他のリスク因子(出血が多いと代償的に脈拍は増える)
脈拍100回/min以上;1点、血便;1点、失神;2点、肝疾患;2点、心不全;2点
合計点数が0点→外来フォローでOK
1〜11点→24時間以内の上部内視鏡施行
12点以上→12時間以内の上部内視鏡施行