SIADHの診断基準とその意義
●SIADHとは
SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)とは名前の通り抗利尿ホルモンであるバソプレシンが血漿浸透圧に対して不適切に分泌されることにより水分過剰貯留となってしまう症候群である。希釈性低ナトリウム血症を呈する。
原因は非常に多く覚えられるものでもないので、大雑把に悪性腫瘍、肺疾患、中枢性疾患、薬などと把握しておけばよいと思われる。その他にも特発性で原因がはっきりしないこともある。
(上スライド参照元)https://www.slideshare.net/katsushigetakagishi/1-na-na
●SIADHの病態
本来、低ナトリウム血症があれば腎臓から水がどんどん排泄されて血中Na濃度は上昇し、血漿浸透圧も上昇するはずである。が、腎臓から水を出すのを阻害する原因がある、それがADHの不適切な分泌である。普通であれば低ナトリウム血漿があり、血漿浸透圧が280mOsm/kg未満のときはADH分泌は抑制されているところ、ADHが分泌されてしまっている(血漿ADH感度以上)ために尿が濃縮され(尿浸透圧300mOsm/kg以上、尿中Na濃度20mEq/l以上)となる。ADH分泌を刺激する原因として甲状腺機能低下症や糖質コルチコイド欠乏もあるので、これら内分泌的異常がないことも除外診断的であるSIADHの診断においては大事。
●SIADHの診断基準(by日本内分泌学会)
以下主症候の1とⅡ検査所見のすべてを満たす時SIADHと診断される。
【Ⅰ.主症候】
1.脱水の所見を認めない。
2.倦怠感、食欲低下、意識障害などの低ナトリウム血症の症状を呈することがある。
【Ⅱ. 検査所見】
・低ナトリウム(血清Na<135mEq/l)
・血漿ADH値(血清Naが135mEq/L未満で、ADHが感度以上)
・血漿浸透圧<280mOsm/kg
・尿浸透圧>300mOsm/kg(海外の基準だと100mOsm/kg以上)
・尿中Na濃度>20mEq/l
・腎機能正常(血漿クレアチニン1.2mg/dl以下)
・副腎皮質機能正常(血漿コルチゾール6μg/dl以上)
また補助項目として次のようなものもある
・尿酸値<4mg/dl
・BUN<21.6mg/dl
・生理食塩水投与後もNa補正困難
・FENa>0.5%
・FEUN>55%
・FEUA>12%
・飲水制限によりNa値改善あり