Base Excessとは何か
●Base Excess(BE;ベースエクセス)とは何か
ベースとは塩基、エクセスとは過剰の意味。つまりベースエクセスとは塩基がどの程度過剰かを意味する用語である。具体的には「体温37℃ , pCO2が40Torrにある血液をpH7.40に戻すために必要な塩基の量」と定義される。
ちなみに血液ガス分析の結果で自動的に測定されているBEは次のような計算式によって算出されている(Siggaard -Andersenの式)↓
BE =(1−0.014×Hb)×{[HCO3―]−24+(9.5+1.63×Hb)×(pH-7.4)}
●何のためにBEなどという概念があるのか
生体で酸塩基平衡のバランスを保つものとして代謝性因子(HCO3-)と呼吸性因子(CO2)とがある。HCO3-は代謝性異常の指標となるが、HCO3-は代謝性だけでなく呼吸性でも代償的に値が変化してしまう。そこで考案されたのがBEという単位。
BEはPaCO2が40Torrの時という縛りをつけることにより呼吸性因子の変動を排除して代謝性因子のみの影響を評価することができる。
よって…!
・BEがプラスであれば代謝性のアルカローシス
・BEがマイナスであれば代謝性のアシドーシス
と単純に評価することができるのである。
が、単純である代わりに呼吸性因子の変動を除去しているので呼吸性アルカローシスや呼吸性アシドーシスなどの評価はできない。よってICU入院中の患者のように複合的に酸塩基平衡バランスが崩れているような病態ではBEのみを用いて酸塩基平衡を評価すると誤った解釈になってしまうおそれがある。
(ということで酸塩基平衡の評価をBEだけを用いて行うことは基本的にない。アメリカでは教科書(ハリソン)にすら載っていないとか…。)
が、例えば急性膵炎の重症度評価にBEの値は1つの項目として採用されている事は知っておいたほうが良いかもしれない。
↓参照
【急性膵炎重症度判定 予後因子】
また追記します。
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おまけ)
ヘンダーソンハッセルバルヒの平衡式によると
CO2 + H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H+ + HCO3-
CO2が増えれば増えるほどH+とHCO3-も増え、CO2が減れば減るほどH+とHCO3-も減ることがわかる。体内においてHCO3-は酸塩基平衡のバッファーとして重要な役割を持っている。PaCO2が40Torrと基準値の場合はHCO3-の基準値は22〜26mEq/lであるが、CO2の値がずれている場合だとHCO3-の基準値も変動してしまって酸塩基バランスがどのように傾いているのか評価が難しくなってしまう。
そこで、HCO3-の値がPaCO2の値によらずすぐに基準値より大きいのか小さいのか判断できるようにするために作られた指標がBEなのである。
PaCO2=40Torrの時に、HCO3-が24mEq/Lだった時の値をBE=0mEq/Lというようにしている。(BEの基準値は−2〜+2)