敗血症における乳酸測定の意義
●ショック状態の時、乳酸の上昇が起こる。
末梢循環が保たれなくなると、末梢組織・細胞レベルで低酸素状態になる。酸素がなくなると好気呼吸であるクエン酸回路、電子伝達回路が回らなくなる。すると嫌気的呼吸の解糖系のみでエネルギー産生することになる。ショック状態では解糖系の最終産物のピルビン酸が乳酸に変換される。
●上記のような機序でショックのときは乳酸が上昇する。
では具体的にどのぐらい上がっていたらどうなのか…?
2016年に新しく改定された敗血症の診断基準では…
【敗血症】
敗血症の定義:感染に対する宿主生体反応の調節不全で、生命を脅かす臓器障害
診断基準:感染症が疑われ、SOFAスコアが2点以上増加したもの
【敗血症性ショック】
敗血症性ショックの定義:敗血症の部分集合であり、実質的に死亡率を上昇させる重度の循環・細胞・代謝の異常を呈するもの
診断基準:十分な輸液不可にもかかわらず、平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管作動薬を必要とし、かつ乳酸測定値が2mmol/Lを超えるもの
ということで敗血症性ショックの診断基準として採用されている。
とはいえ、乳酸が2mmol/L以下であったとしても「十分な輸液不可にも関わらず、平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管作動薬を必要とする」状況というのは十分に敗血症性ショックと言っても良いような気もしてしまいますが(素人考え)
とある報告「Serum Lactate as a Predictor of Mortality in Emergency Department Patients with Infection」によれば…
乳酸の値が以下のようだと入院28日以内の死亡率が以下のようであったとのこと。(後ろ向きコホート)
2.5mmol/dl以下→死亡率4.9%
2.5-4mmol/dl→死亡率9.0%
4mmol/dl以上→死亡率28.4%
2mmol/dl以上だと敗血症性ショックの診断基準に該当、その倍の4以上だと死亡率が非常に高くなるということは知っておいたほうがいいのかもしれません。
また追記します。