失神の鑑別診断
失神(一過性意識消失)の鑑別診断
大きく分けて以下の通り。
心血管性、脳血管疾患、出血・脱水、電解質異常、低血糖、起立性低血圧、迷走神経反射、てんかん
◯心血管性
不整脈(VF、VT、房室ブロック、洞機能不全)
心疾患(ACS、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、大動脈解離、肺塞栓症)
・心血管性のリスク因子:高齢者、心疾患の既往歴、突然死の家族歴、前駆症状なし
仰臥位で発症、運動時の発症、胸痛・動機・息切れを伴う失神
心電図異常(ST変化、徐脈、洞房ブロック、頻脈性の発作性上室性頻拍など)
◯脳血管疾患
クモ膜下出血、椎骨脳底動脈のTIA
くも膜下出血は致死的疾患のため少しでも疑われた場合は頭部CTの施行が必要。
神経学的異常があれば一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があるが、神経学的症状がないのにTIAということは稀。
◯出血・脱水
消化管出血、大動脈瘤破裂、異所性妊娠破裂、熱中症など
失神に対してはルーチンで採血で貧血や脱水がないか評価が必要。「一見元気そう」な見た目に騙されない。若年女性の失神を既往歴もないし迷走神経反射だろうと安易に考えるのは危険。
◯代謝系
低血糖(糖尿病薬、副腎不全など)、電解質異常
これらの異常も鑑別に挙げておくべきであるが、採血をしてしまえば拾うことが出来るのでやはりルーチンの採血は必要。
◯薬剤性
内服薬の確認。
血管拡張作用、電解質異常、QT延長などを介して多種の薬が失神を起こす。
その他経口血糖降下薬やインスリンによる低血糖が無いかも大事。
・血管拡張薬
降圧薬、α1ブロッカー、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、MAO阻害薬、アルコール
・利尿薬・漢方
低カリウム血症による不整脈で失神起こしうる
・QT延長症候群を起こす薬剤
抗不整脈薬:1a群:キニジン、プロカインアミド Ⅲ群:アミオダロン
抗精神病薬:ハロペリドール、フェノチアジン
抗菌薬:マクロライド系、キノロン刑、ペンタミジン、クロロキン
制吐薬:ドロペリドール、オンダンセトロン
◯迷走神経反射
失神の原因として最も多い。失神の際の頭部外傷などには注意が必要だが、失神としての予後は良好。
迷走神経反射の原因として
疼痛、静止直立姿勢、貧血、血管内脱水、高温環境、血を目にすること、アルコール摂取など
失神前の予兆として動機、悪心、顔面蒼白、発汗などの前駆症状を認める。起立後5分以内であれば起立性低血圧の可能性があるが、5分以上の起立後であれば迷走神経反射の方が疑わしい。
◯起立性低血圧
体位変換直後の発症。臥位から起立すると血液が下半身に移行し心拍出量が減少し、血圧が低下する。健常人なら圧受容体反射系の賦活化により対応できるが、反射系の異常や循環血液量が減少している場合は対応できずに血圧低下により失神をきたす。
・出血(上部消化管出血、腹腔内出血、異所性妊娠など)
・自律神経障害(パーキンソン病やレビー小体型認知症、あるいは糖尿病や腎不全など二次性のもの)
・βブロッカーなど薬剤性のもの
◯自律神経障害
神経内科疾患(パーキンソン病、多系統萎縮症、レビー小体型認知症)、糖尿病合併神経障害
既往歴にあれば疑わしい。が、他を除外せずに思い込みは危険。
◯てんかん(失神ではないが)
また追記編集します。