つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

切迫するDとは何か

【primary surveyのABCDE】

A:Airway(気道)

B: Breathing(呼吸)

C:Circulation(循環)

D:disability of central nervous system(中枢神経)

E:Exposure(脱衣),Environment(環境)

 

primary surveyにおけるDのポイントは直ちに緊急手術が必要となる頭蓋内占拠性病変の有無を身体所見と神経学的所見から推測することである。

神経学的所見として必ずみるポイントは

・意識レベル(原則GCSで評価)

・瞳孔不同の有無

・対光反射の有無

・片麻痺の有無

である。これらの異常があると頭蓋内病変による脳実質の圧迫や虚血が示唆される。

 

【切迫するDとは】

・GCSの合計が8点以下、JCS≧Ⅱ−30

・GCSの合計点が2点以上低下(経時的に何回も見る)

・脳ヘルニアが疑われる場合(瞳孔不同:左右差1mm以上、対光反射消失、散瞳≧4mm以上、四肢動きの左右差(片麻痺)、クッシング現象の有無)

関連記事:クッシング現象の機序 - とある研修医の雑記帳

 

これらの場合は生命を脅かす重症頭部外傷として切迫するDと定義されている。切迫するDに遭遇した場合、ただちにやるべきことは3つ。

1:確実な気道確保(気管挿管)

2:脳外科へのコンサル

3:頭部CTの施行(secondary surveyの1つ)

が、実際には切迫するDであっても緊急脳外科手術が必要な症例は1割にも満たないという。しかし、もし開頭手術が必要な状態であれば直ちに脳外科コンサルしないと手遅れになることもある。

また、切迫するDへの対応の前の大前提として、ABC(気道、呼吸、循環)の安定化をしなければならない。このことが低酸素血症やショックなどから起こる二次的脳損傷を防ぐことにもつながる。であるから明らかに頭蓋内病変がありそうであっても酸素化や血圧に問題があればその改善が最優先される。

 

参考文献:外傷初期診療ガイドライン、Primary-Care Trauma Life Support〜元気になる外傷ケア〜