女性の下腹部痛へのアプローチ
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女性の下腹部痛へのアプローチ
まず、妊娠しているか妊娠していないかが大きなポイント
(産科的疾患なのか、婦人科的疾患なのか)
✅妊娠しているかどうか問診・検査
月経歴:最終月経がいつか、その前の月経はいつだったか。
性交歴:性交歴のある女性では必ず妊娠を疑う(患者が100%ないと言っていても妊娠している可能性はある…)
性交歴の尋ね方の例「女性の方には必ず聞いていますが性交渉の経験はありますか?もし半年以内にあれば可能性は低いかもしれませんが病院の方針で必ず妊娠反応検査をさせていただいています。」
妊娠検査(hCG):陽性であれば除外できるまでは子宮外妊娠を考える。
✅患者が妊娠を否定していても妊娠反応検査が必要
異所性妊娠に伴う不正性器出血を月経と勘違いすることもあり、妊娠反応検査を行わないと、妊娠の否定はできないと考える。
✅妊娠反応陰性の産婦人科の急性腹症
・妊娠反応陰性であれば子宮外妊娠は否定できる。
・緊急性があるのは卵巣腫瘍茎捻転ぐらい。妊娠反応陰性であればCTも行えるので腹腔内出血や卵巣腫瘍の有無も確認しやすい。
✅妊娠を疑わない場合
・月経期間中→月経困難症
・月経期間でなく、最近性交渉あり→PID(骨盤内炎症性疾患)
(卵管や卵巣の感染が上行性に骨盤に波及する状態。発熱、腹膜刺激症状も呈する)
・腹部エコーで卵巣腫大あり→卵巣腫瘍茎捻転
(症状が一定せず診断が難しい。が診断されれば緊急手術)
・腹部エコーで骨盤内エコーフリースペースあり→卵巣出血
(卵巣からの出血が腹腔内に貯留する。保存的に治ることが多いが遼が多ければ手術も。月経黄体期に起こることが多い)
✅卵巣茎捻転
・・通常は2-3cmの卵巣。卵巣のう腫が5-6cm程度になると茎捻転を起こす可能性がある。
・ねじれかけても元に戻る可能性はあるが、完全に捻転すると壊死する。
・突然の腹痛で受診する例が多いが、数週間前より軽度の腹痛や悪心や下痢なども伴い急性胃腸炎と診断されてしまうこともある。
・右:左=2:1。左側に少ない理由はS状結腸が靭帯の癒着を防いでいるとされる。
・腫瘤は静脈うっ滞と動脈からの血流流入によってうっ血状態となり、壁は偏心性もしくは全周性に浮腫性肥厚を呈する
・さらに浮腫、うっ血が進行すると動脈からの血流も遮断され造影/増強効果の欠如を認める。
・CTでのポイント:卵巣嚢腫があることが条件。 浮腫で太くなった卵管がらせん状に描出される。
【最終月経時期から考える女性の下腹部痛】
画像引用:月経周期とは|月経周期を考慮したコンディショニング法
【腹痛の発症時期】
月経開始直後→子宮内膜症
子宮内膜症は子宮内腔にしか存在しないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所にできてしまう。腹腔内炎症によってプロスタグランジンが過剰に分泌されて必要以上に支給が収縮して痛みが生じる。
「月経を重ねる毎に増強する月経痛」が典型的エピソード。
月経中→毒素性ショック症候群
ブドウ球菌(orレンサ球菌)の外毒素によって発症。
腟にすでにブドウ球菌が定着している女性がタンポンを使用することによってしばしば起こる。外毒素が粘膜損傷部または子宮を介して血流へ侵入するのを促進してしまう。症状は高熱,低血圧,びまん性紅斑性発疹、そして重度のショックへと急速に進行する多臓器病変→ICU管理が必要となる。
月経中〜終了3日間以内→骨盤腹膜炎
子宮内膜炎や付属器炎が上行感染を起こし、腹腔内にも炎症が伝わった状態。消化管穿孔や急性虫垂炎などの下行感染でも起こりうる。下腹部痛に加えて悪寒戦慄、発熱、嘔吐などを呈する。進行すると肝周囲炎に。
排卵日→排卵出血
排卵日±数日→卵胞出血
月経1週間前→黄体出血
これらはいずれも機能的出血であり通常なら出血量は少ない。一般的には性成熟期に多く見られる。一週間以上続くようであれば不正性器出血を疑う。
月経の遅れ(+妊娠反応陽性)→不全流産、子宮外妊娠
不全流産:進行流産の後に、胎児や組織が一部子宮の中に残ってしまい生じる腹痛
子宮外妊娠:卵管や子宮頸部など異所性の妊娠によって起こる腹痛。
追記更新します