強化インスリン療法とその適応
◯強化インスリン療法とは
強化インスリン療法とは頻回のインスリン注射によって血糖変動を健常者に近づける方法。健常者の生理的なインスリン分泌は基礎分泌と追加分泌からなるが、強化インスリン療法では速効型インスリンと持効型インスリンを併用することで生理的なインスリン分泌を模倣する。
端的に言えば、長時間作用型と短時間作用型の併用などインスリン製剤療法を頻回に使って血糖コントロールを強力にする方法が強化インスリン療法(だが、患者のインスリン分泌能によっては持効型を使わない場合もある)。
外部からインスリンを補充することで膵臓を休ませることが出来る。
基礎分泌…空腹時に肝臓で糖新生やグリコーゲン分解の調節を行うためのインスリン分泌。
追加分泌…食後の血糖上昇を抑えるためのインスリン分泌。
端的に言えば基礎分泌は絶えずダラダラ出ているインスリンで、追加分泌は食後にまとめてドバっとでるインスリン。次のイラスト参照
https://www.kango-roo.com/sn/a/view/519
◯強化インスリン療法のパターン
強化インスリン療法にはいくつかのパターンが有る。
・持効型インスリン(眠る前)と超速効型インスリン(食前に1日3回)を併用して基礎分泌と追加分泌を模倣する(=ベーラスボーラス療法とも)。
・患者の膵臓がまだそこまで弱ってなく、基礎分泌が保たれている場合である。その時は食前3回の速効型インスリンのみを打つ。
・インスリンポンプを用いた持続皮下インスリン注入療法 (CSII)
つまり強化インスリン療法とは血糖変動を生理的なものに近づける治療であり、インスリン注射の手段は問われない。
◯強化インスリン療法の適応
・1型糖尿病患者
・2型糖尿病患者で高血糖持続している患者(糖毒性の悪循環で内服薬だけでは血糖コントロールが難しいことがある。その場合は一時的に強化インスリン療法で血糖を下げる。その後インスリン離脱も可能)
・妊娠中の患者(内服薬は催奇形性があるため禁忌)
◯強化インスリン療法のデメリット
強化インスリン療法は多い場合眠前1回と食前3回打つことになるのでかなりの注射回数になる。血糖コントロールとしては理想的な治療法になりうるが、患者のコンプライアンスがあればこその話であり、打ち忘れをしがちな患者ではその恩恵を受けられない。また、多く打ちすぎても低血糖のリスクがあるのできちんと管理できる患者にのみ適応となる治療法である。