A群βレンサ球菌の壊死性筋膜炎にペニシリン・クリンダマイシン併用する理由
【壊死性筋膜炎とは】
壊死性筋膜炎とは感染症によって筋肉の表面の表面に沿って壊死が進行する疾患。原因菌としては皮膚に常在する黄色ブドウ球菌やA群β溶血性れんさ球菌(通称人食いバクテリア)などがある。刺し傷などの外傷によって表皮から筋肉の内部まで菌が到達してしまうことにより発症することが多い。
レンサ球菌による壊死性筋膜炎は菌そのものの感染よりも、レンサ球菌の産生するタンパクの方がやっかいで、産生されたタンパクは筋肉の壊死を進めたりスーパー抗原として働きトキシックショックや多臓器不全を起こす。
【ペニシリンに加えてクリンダマイシンも用いる理由】
レンサ球菌に対する抗菌薬としてはペニシリンが著効するが、前述の理由によりレンサ球菌の作り出すタンパク質も抑えなければならない。そこで用いられるのがクリンダマイシンである。クリンダマイシンはタンパクを合成する細胞小器官であるリボソーム50Sに作用して細菌のタンパク合成を阻害し、トキシックショックを抑えることが出来る。(by動物実験、後ろ向き研究)
血液培養で原因菌がA群βとわかっている時はペニシリンとクリンダマイシンの併用療法で良いが、まだわかっていない状態であっても嫌気性菌やグラム陰性菌にも効果のあるカルバペネムなどの広域抗菌薬をエンピリックに用いなければならない。