パーキンソン病の病態:braak仮説とは何か
パーキンソン病の病態:braak仮説とは何か
パーキンソン病は中脳黒質のドーパミン産生細胞が変性による脱落、またはレヴィー小体の出現によって様々な症状が出現する疾患である。
長年の間パーキンソン病は黒質から破壊されると考えられていたが、braakによってαシヌクレインの沈着は迷走神経の背側核と嗅球に最初に起こり脳幹を経て次第に大脳新皮質に向かって病変が広がっていくことを明らかにした。
braak仮説の図*1
braak仮説はパーキンソン病をαシヌクレイン沈着の広がりで6ステージに分類している。(パーキンソン病のうち90%はbraak仮説に一致した病変の広がりを見せてるとの報告がある)
ステージ1:αシヌクレインの沈着は迷走神経背側核と嗅球に限定
ステージ2:青斑核に広がる
ステージ3:黒質に広がる
ステージ4:中間皮質に広がる
ステージ5:高次感覚連合野に広がる
ステージ6:1次感覚連合野に広がる
パーキンソン病を発症する前の段階でもαシヌクレインは迷走神経心臓、皮膚、消化管神経叢、そして脳幹などに沈着することもわかってきている。よって初発症状は必ずしもパーキンソニズムではなく、便秘などの消化管症状であることもある。
braak仮説は一見クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と似ているようにも思える。CJDは感染因子の異常なプリオンが正常細胞のプリオンを巻き込んで増殖していく疾患である。パーキンソン病でも自律神経に沈着したαシヌクレインが上行していき、最終的に大脳にまで広がる。これは飛び飛びの病変ではなく、神経細胞を連続的に広がっていくと考えられている。研究室レベルの話ではあるが、培養神経細胞では軸索輸送によって凝集シヌクレインが隣の別の神経細胞に伝播するとの実験結果もある。。ただ、クロイツフェルト・ヤコブ病と異なり、凝集αシヌクレインが体外に出て感染因子となるかについてはエビデンスは今のところない。