失行と失認の違い
失行と失認の違い
■失行とは
失行とは文字通り「行為を失う」という意。失うわけであるので”以前は出来た行為”でなければならない。そして更に、麻痺などの運動障害がなく、どのような行為かを理解し、またそれを実行する意志があるにも関わらず出来ないような場合に”失行”と呼ばれる。
失行にはいくつかの種類がある。
観念運動失行:自動運動は可能であるが、意図運動ができない失行。例えば自分で”バイバイ”と自分から手をふることは出来るのに、「バイバイと手を振って下さい」と指示されるとできなくなる。責任病変は優位半球の頭頂葉。
観念失行:個々の動作は出来ても連続した一連の動作ができなくなる失行。例えば冷蔵庫からお茶を出してコップに入れて飲むという動作ができなくなる。”冷蔵庫を開ける”
ことや”コップを口に持っていく”という個別の動作は可能であるが、一連の流れが出来ない。一般的に道具の使用が困難になる。
肢節運動失行:神経には異常が無いにもかかわらず運動が上手くできなくなる失行。例えば『コップを持てない』など。前述の観念運動失行では自発的な運動は可能であったが、肢節運動失行では自発的にも出来なくなる。病変部位の対側に出現し、運動麻痺と区別がつかないので失行ではなく麻痺と勘違いされることもある。中心回の障害が原因であり、運動の記憶が障害されることによる。
着衣失行:服をうまく着れなくなる失行。服を裏表逆に来たり、ズボンを頭に被ったりしてしまう。しかも誤って着ても患者は気がつかない。劣位半球障害で生じる。
構成失行:絵をかく、積み木を組み立てるなどの構成行為ができなくなる。頭頂葉の障害によって生じると考えられていて、優位半球障害でも劣位半球障害でも生じる。優位半球書具合の場合はGerstmann症候群の合併が多く、劣位半球障害の場合は半側空間無視を合併することがある。
■失認とは
失認とは”認知を失う”こと。1つの感覚を通して対象物を認知できない状態。視覚失認、聴覚失認、視空間失認、触覚性失認、身体失認などがある。
例えば、視覚失認の場合は視覚の経路だけが機能していないので、聴覚や触覚などは正常に認知することが出来る。笛を見せても何か認識できなくとも、笛を吹いて聴かせると”笛だ”とわかる。
責任病変は各失認によって異なるが、視覚失認は後頭葉、聴覚失認は側頭葉、触覚失認は頭頂葉と関連があると考えられている。