半側空間無視の病巣と診察
半側空間無視とは視覚性失認の1つ。視野障害で半分の空間を見えなくなっているのではなく、大脳の高次機能障害によって半側の空間に何か視覚性の刺激があったとしても反応したり順応することができなくなってしまった状態である。
多くの場合は、劣位大脳半球である右大脳の障害により病側と反対側の左空間を無視してしまう。臨床的に最も多い原因は脳血管障害であり、右大脳に梗塞が起こると左半側空間無視を呈することがある。一方で左半球に言語機能が存在しているので左大脳梗塞では失語症状が出現する。右半球の障害では空間無視、左半球の障害では失語症状が出現しうるというのは脳血管障害急性期の病態把握の点で重要である。
責任病巣としては、古典的には右頭頂葉(右下頭頂小葉ないし側頭〜頭頂接合部の皮質性病変)が考えられているが、他の部位でも生じうることがわかってきており、未だ単一の病巣がわかっているわけではない。
軽症なものは下にあげるような線分抹消テストなどで検査するが、症状が重い場合は視線を病側にずっと向けていて反対側を見ようとしなかったり、歩行時に次第に障害側に寄ってしまう、食事の際にお膳の半分側をなどの症状が出現する。
【検査の例】
◯簡単な絵を模写、時計模写する試験法
http://ptskgw1016.com/2017/08/10/usn/
上の草花のイラストのように左半側空間無視があると絵の左半分だけが綺麗に消える。
◯直線の二等分試験:白紙に横に引いた直線の中点と思うところに印をつけさせる。すると、患者の印する場所は、病側に偏る。健側は見えていないということである。あるいはベッドサイドで簡単に施行するには聴診器をピンっと左右に伸ばしてゴムの部分の中心部がどこか指さしてもらうことでも検査可能である。
◯線分抹消テスト
http://nejp.sakura.ne.jp/anma/81_a/
上図のように線を沢山書いた紙を見せて線を1つ1つチェックしていってもらう。右の線にはチェックが入るが左側にある線はまるごと存在を忘れられている。このような場合、左半側空間無視となる。