全層植皮と分層植皮の違い
植皮術とは…
深達性熱傷の創閉鎖や広範囲熱傷患者を救命するために避けられない治療である。早期の植皮術による傷の閉鎖が合併症や後遺症を抑え、救命率を上昇させることは明らかであるが、熱傷面積が広範囲になるほど早期の創閉鎖は困難となり、小さい皮膚で広範囲の創閉鎖を行わなければならず、術者にとって難易度は高くなる。
■植皮術の比較
植皮術の種類は、全層植皮術と分層植皮術の2つに分けられる。簡単に言うと…
分層植皮=表皮と真皮の一部だけを含んだもの。
全層植皮=表皮と真皮の全層を含んだもの。
☆全層植皮術について
皮膚全層を移植する方法であり、植皮部の整容性・機能性に優れている。適用部位は顔面、頸部、関節部などである。移植部との色合いや質感がマッチしている部分が採皮部として選択される。具体的には、顔面の再建には耳介後部、鎖骨上窩、鎖骨下がよく、比較的広い範囲の採皮が必要であれば、側腹部、下腹部、鼠径部が選択される。
☆分層植皮術について
熱傷の早期手術や、早期創閉鎖のために多用される植皮術である。特に広範囲熱傷では、少ない採皮部より上皮化を待って、何回も採皮することになるため、救命のために重要である。しかし、色素沈着しやすくまた整容性にすぐれないため、患者のQOLとしては大きな問題を抱えている術式とも言える。
全層植皮と分層植皮のメリット・デメリットをまとめると…
全層植皮
母床の血行が良くなければ生着しにくい
術後収縮が少ない
色素沈着しにくい
整容性は非常に良い
感染に対して弱い
採皮部は縫縮もしくは植皮が必要
顔面などの露出部のみに適応
広範囲の植皮や血行の悪い母床上には不適応
分層植皮
薄いほど生着しやすい
術後収縮が強い
色素沈着しやすい
整容性は良くない
感染に対しては強い
採皮部は保存的に上皮化する
広範囲の植皮が適応
荷重部や顔面などの露出部には適応にならない
という感じです。