熱傷へのアプローチ
熱傷へのアプローチ
【ポイント】
・バイタル評価、酸素投与・輸液により全身状態の安定化
・疼痛を抑えるために氷冷した生理食塩水にひたしておいた滅菌タオルで熱傷部位を覆う(痛みを訴えなくなるまで続ける。20〜30分)
・冷却でも痛みが続けばモルヒネの投与も検討する。
・熱傷の評価(広さ、深達度)の評価
・重症なら総合病院への転送が必要
・創部が汚染されている場合は洗浄・デブリドマンそして予防的に破傷風トキソイドを投与(抗菌薬全身投与は不要)
■面積と深達度の評価
・深達度と範囲の評価を行う(成人9の法則、下図参考*1)
・手掌の面積が1%というのもポイントで、体の一部がやけどの場合は手掌何個分かを意識すると概算しやすい。
■深達度の評価*2
・水疱を形成していたら2度
(水疱底が赤ければ浅い2度、白くて貧血様であれば深い2度)
・深い2度以上であれば植皮が必要。
・痛みが無ければ深い2度or3度熱傷
■入院か外来か
熱傷面積、熱傷部位で重症度を分類することが出来る。
重症熱傷:総合病院への転送が必要
2度熱傷が体表30%以上
3度熱傷が体表10%以上
顔面、手、足、陰部の熱傷
気道熱傷疑い(←口腔内や鼻腔内に発赤や煤の付着を認める)
軟部組織の損傷や骨折を伴うもの
中等度熱傷:入院治療
2度熱傷が体表15%以上〜30%以下
3度熱傷が体表10%未満&手足、顔面にはなし
軽度熱傷:外来治療可能
2度熱傷が15%未満
3度熱傷が2%未満
重篤な基礎疾患を有する場合や高齢者も考慮が必要
■傷の処置
・水疱は破かない。
・破けたばかりの水疱は水疱膜を元の位置に戻して熱傷創面を覆い、生理的被覆材として利用する。これをadapticなどの非粘着性のガーゼで覆い、更に厚手の滅菌ガーゼで保護する。
・水疱が破けて時間が立っているor汚染されている場合は洗浄、デブリドマン。
その後、粘着性のある透明ポリウレタンフィルム(テガターム®)で覆い、湿潤環境を維持する(→再上皮化を促進できる)。
・破けていない水疱はポビドンヨードで優しく洗浄し、生理食塩水ですすぐ。
破けてる水疱も生理食塩水で洗浄。
・ドレッシング材で覆う場合は被覆部位の周囲に健常な部位が残存して無ければならない。また、滲出液が溜まってきたら吸収性のドレッシング剤に交換する必要がある。
■輸液
【輸液はどれだけするべきか】
・熱傷面積が20%以上であれば全例輸液必要。乳酸加リンゲル液。
輸液量=4×体重(kg)×熱傷面積(%)
例えば50歳が20%熱傷であれば4000mlの輸液が必要。この量の半分を最初の8時間で、残りの半分を次の16時間で。
尿量は輸液効果の目安になる。目標は1時間100ml程度。
■感染予防
・傷が汚ければ破傷風トキソイドを投与。
・予防目的での抗生剤の全身投与は不要。感染予防のエビデンスなし。
参考文献:
マイナーエマージェンシー、ER実践ハンドブック、当直ご法度