カポジ水痘様発疹への対応
カポジ水痘様発疹(=疱疹性湿疹)への対応
◯カポジ水痘様発疹とは
アトピー性皮膚炎や熱傷、接触皮膚炎などの湿疹部位に単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の初感染もしくは再発によって生じる皮疹である。頻度としてはアトピー性皮膚炎患者に生じるものが圧倒的に多いと言われている。誘引は疲労やストレス。
◯アトピー性皮膚炎患者に多い理由
アトピー性皮膚炎では皮膚バリアである角質が破綻しているために外からHSV-1が侵入しやすいため容易に発症する。
◯皮疹の特徴
男性や子供では顔面や頸部、女性では胸部に好発する(アトピーの場合はアトピーと同じ部位に皮疹が出現)。
数mm程度の小さなびらん・痂皮が汎発する。
それぞれの皮疹には中心臍窩をもつ小水疱があり、速やかにびらん・痂皮になる。
◯症状
ヒリヒリ、ちくちくとした痛み
初期には掻痒感はないが、痂皮化が進むと出現する。
38度以上の熱(熱がなければ軽症)
◯検査
小水疱やびらんからTzanckテストや蛍光抗体法によりウィルスを証明できる。
が、カポジ水痘様発疹症の場合は現病歴から診断がなされることが多い。
◯治療
・皮疹の範囲が限定的で発熱を伴わなければ単純疱疹に準じた治療
→バルトレックス®(バラシクロビル)内服
・皮疹の範囲が広範囲+発熱を伴う場合はゾビラックス®(アシクロビル)点滴
解熱して痂皮化が進めば内服に切替可能。
・ゲンタシン®などの外用薬でびらん面の保護
→抗ウィルス薬の内服や点滴を行っていれば抗ウィルス薬の外用薬は必要ない
(間違ってもカポジ水痘様発疹症の場所にステロイドは用いない。悪化する)
・洗浄
びらん面への膿痂疹合併予防のためシャワーなどでの洗浄を適宜指示する。
・二次的に細菌感染をしている場合(アトピー性皮膚炎病変自体が黄色または表皮ブドウ球菌が多く存在するので細菌感染が起こりやすい)
→セファゾリンなどの抗菌薬治療も併せて行う
◯治療経過
通常抗ウィルス薬投与数日以内で解熱、1週間で痂皮化し痛みも消失する。
アトピー性皮膚炎のコントロール不良が原因のこともあるので、カポジ水痘様発疹症の治療のどこかの段階でステロイド外用でアトピーコントロールも必要(ERでやることではない)
◯画像紹介
【カポジ水痘様発疹症の3例】
http://www.tanpopokodomo-clinic.com/wp/case/casetype/224/119/