つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

H2RAとPPIの違いと使い分け

 

 

◯H2RAとPPIの作用機序の比較

 H2RA(ガスター®、ファモチジン)の作用機序はそもそも胃酸の分泌メカニズムであるが、胃の壁細胞にはアセチルコリン、ヒスタミン、ガストリンなどの伝達物質に対する受容体が存在しており、これらの物質が受容体に結合するとその信号がH+輸送体(プロトンポンプ)に伝わり、細胞の外に胃酸の元となるH+を分泌させる。

 伝達物質の中でも特に重要なのはヒスタミンであり、ヒスタミン受容体であるH2Rに結合することで胃酸が強力に分泌されてしまう。そこで、ヒスタミンがヒスタミン受容体に結合するのを抑える薬がガスターなどのH2RA(ヒスタミン2受容体阻害剤)である。酸分泌量に関しては、ファモチジン20mg製剤の投与によって12時間以上に渡って胃酸分泌を抑制する効果があり、12時間胃酸分泌抑制率は93.8%との報告もある。

 

一方、PPIはH2RAよりも更に強力に胃酸分泌を抑制することの出来る物質である。H2RAはヒスタミン受容体を介した胃酸分泌を止めていたのに対して、PPIは更に下流にあるプロトンポンプインヒビターであり、ヒスタミン以外のアセチルコリンやガストリン受容体を介した胃酸分泌の抑制もすることができる(↓イラスト参照)。

 

 

f:id:tsunepi:20171204175222p:plain

参考:http://kenko-tips.com/articles/proton-pump-inhibitor/#midashi1

 

 

◯臨床的にPPIとH2RAはどう違うか

PPI

・消化性潰瘍の治療、NSAIDS潰瘍予防、抗血小板薬による潰瘍の予防に有用。1日一回投与でよい。

・胃酸分泌抑制作用が強力

・肝排泄

・副作用:血小板減少、下痢。

(タケプロンであればcollagenous colitisのリスク増加も有名)

・注意点として、保険適応が胃潰瘍及びGERDが8週間まで、十二指腸潰瘍に関しては6週間という制限がある。

 

H2RA

・胃内pHの立ち上がりがはやい(=即効性がある。投与後4時間での胃内のpHの比較ではH2RAの方がPPIより高くて良好)

・消化性潰瘍であればPPIが第一選択になるので、PPIが使えない時にH2RAの出番がある。

・NSAIDS潰瘍の予防については通常量では十二指腸潰瘍の予防効果があるが、胃潰瘍の予防については高用量でのみで予防効果が認められるとされている。(が、NSAIDS潰瘍予防でもそもそもPPIの方が優れている)

・PPIと違って投薬期間の制限がない。

・安い

・腎臓排泄なので腎機能による調節が必要になる。

 

 

◯例えば、上部消化管の出血性潰瘍での対応:

すぐにH2RAの静注を行う。(例:ガスター®20ml+生理食塩水20ml)を緩徐に投与。

その後、内視鏡的に止血を行う。止血後はPPIを処方。H2RAとPPI併用は禁忌。

 

 

 

【関連記事】

tsunepi.hatenablog.com

 

 

【参考文献】

・新・日常診療での薬の選び方・使い方

・ICU実践ハンドブック

・薬のデギュスタシオン