ロキムコとは何か(→NSAIDS潰瘍の予防)
ロキムコとは何か
ロキムコとはロキソニン+ムコスタを合わせた俗語。
NSAIDS鎮痛薬であるロキソニンは胃粘膜障害をしてしまうので、それを保護する意味合いで胃薬であるムコスタ(レバミピド)が一緒に処方されることが多い。ムコスタは胃粘膜でのプロスタグランジンの増加作用があるのでプロスタグランジンを低下させるNSAIDSと一緒に飲むというのは薬理学的には理にかなっている。
ロキソニン処方時にはほぼセットのように処方されているムコスタであるが、ロキソニンとムコスタの組み合わせで胃粘膜障害を予防できるというエビデンスは意外とない。
そして実は保険的にはNSAIDSとムコスタの組み合わせは認められていない。
NSAIDSによる胃潰瘍、十二指腸潰瘍への予防適応のある薬は以下の通り↓
※『サイトテック』の効能・効果
NSAIDsの長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍
※『タケキャブ』、『タケプロン』、『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』の効能・効果
低用量アスピリン・NSAIDs投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制
また、NSAIDS潰瘍合併症予防ガイドラインによればNSAIDSと一緒にムコスタではなくPPIの服用が勧められているという事実もある。
【NSAIDS潰瘍リスク分類】
◯高リスク
・出血性潰瘍の既往
・3個以上の中等度リスク因子を持つ
高リスク患者では…
心血管リスクなし→COX2選択的阻害薬+PPI(もしくは代替療法を推奨)
心血管リスクあり→代替療法推奨(NSAIDS/COX2選択的阻害薬の使用しない)
◯中等度リスク(下記4項目の内1−2個満たす)
・高齢者(65歳以上)
・高用量のNSAIDS服用
・出血を伴わない潰瘍の既往
・アスピリン、抗凝固薬、ステロイドの併用
中等度リスク患者では…
心血管リスクなし→NSAIDS+PPI
心血管リスクあり→ナプロキセン+PPI
◯低リスク
・リスク因子なし
低リスク患者では…
心血管リスクなし→NSAIDS単独処方
心血管リスクあり→ナプロキセン+PPI
ちなみに心血管リスクの有無で推奨の処方が異なるのは、NSAIDS、COX2選択的阻害薬はいずれも心血管リスクを有意に増加させるという報告があるからである。心血管リスクがある場合はナプロキセンが推奨されている。ナプロキセンはNSAIDSの中で最も消化管イベント発症リスクが低いというデータが有る。
参考:NSAID使用による心血管リスク:どのNSAIDが最も安全か | Nature Reviews Rheumatology | Nature Research
ロキムコは保険でなくてもエビデンスがなくてもほぼ儀式的にに日本では投与され続けている。その理由として歴史が長く安全性が高い、コストが安いなどの理由が考えられる。武田製薬のタケキャブキャンペーンが凄まじいがいつの日かロキキャブ?が常識の日も来るのかもしれない。