ICUでのストレス潰瘍の予防とその適応
ストレス潰瘍とは身体的および精神的にに何らかのストレスがかかることにより上部消化管に潰瘍が生じることを言う(文字通り)。ICUに入室するような患者では高度に身体的な侵襲を受けており、さらにそれに対する治療によっても医原性な侵襲が加わっている。ICU入院患者では入院後1日以内に75〜100%の患者で粘膜病変が出現し、予防しない限りは5〜25%で潰瘍からの出血が生じるとの報告がある。
(参考→Prophylactic therapy for stress ulcer bleeding: a reappraisal.)
ストレス潰瘍予防ガイドラインによれば、ICU患者の潰瘍予防の適応は以下の通り
絶対適応
・凝固障害あり(血小板<5万、PT-INR>1.5、APTT>2秒)
・気管挿管が2日以上
・意識障害(GCS≦10)
・一年以内の上部消化管潰瘍もしくは出血の既往
・外傷性脳挫傷、外傷性脊髄損傷、熱傷(体表面積35%以上)
相対適応(以下2項目以上)
・敗血症
・一週間以上のICR入院
・6日以上の潜在的な消化管出血(潜血)
・ステロイド治療(一日250mg以上のヒドロコルチゾン)
消化管出血のリスクの患者にのみPPI(プロトンポンプインヒビター)やH2RA(H2受容体拮抗薬)などの潰瘍予防薬の投与が推奨されており、リスクのない患者に「念のために」と闇雲にPPI、H2RAを投与してはならない。というのも、胃内pHが4以上に上昇すると細菌が死ににくくなり、胃内でコロニーを形成し誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎のリスクが増大すると言われている。