つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

ロキソニンとセレコックスの違い

代表的なNSAIDSであるロキソニンとセレコックスの違い

 

・基礎的な話(COX1とCOX2の違い)

NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)はアラキドン酸からプロスタグランジンを合成する過程に作用するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで作用を発揮する。

COXには2つのサブタイプが有り、胃粘膜保護や血小板凝集などに関与するCOX1炎症や痛み、発熱を引き起こすCOX2とに分けられる。

ロキソニンはCOX1とCOX2を非特異的に阻害するために鎮痛作用と引き換えに胃粘膜を荒らしてしまう。一方でセレコックスはCOX2だけを選択的に阻害するために鎮痛作用はあるが胃粘膜障害は起こさないという優れたお薬。ただしセレコックスは心筋梗塞リスクが上昇することが知られているので注意が必要。

とあるメタアナリシスによると(参照:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16740558)従来のNSAIDSでは心筋梗塞リスクが1年あたり0.4%発症率であるのに対してCOX2選択的阻害薬であるセレコックスでは1年あたり0.6%の発症率と有意に上昇させ、約1.5倍のリスク上昇が示唆されている。ちなみにプラセボ群では心筋梗塞発症率0.3%/年。

 

 

COX1とCOX2の違い

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イラスト参考:https://www.fizz-di.jp/archives/1038054665.html

 

・ロキソニンとセレコックスの使い分け

鎮痛薬では第一選択としてロキソニンが用いられることが多いが、前述の通り胃粘膜障害を引き起こすリスクがあるので消化管障害のリスクのある患者ではロキソニンはやめてセレコックスなど他の薬のほうが望ましい。逆にセレコックスは心筋梗塞リスクを上昇させるので心臓疾患リスクのある患者ではセレコックスは使いづらいということになる。

 

鎮痛薬使い分けについて、米国消化器病学会の推奨は次の通り

【心血管疾患リスクが低い患者】

・消化管障害リスク低い場合→NSAIDS単独使用可能

・消化管障害リスク中等度の場合→NSAIDSとPPI併用

・消化管障害リスク高い場合→COX2阻害薬とPPI併用。ができれば避ける

 【心血管疾患リスクが高い患者】

・消化管障害リスクが低い場合→ナプロキセンとPPI併用

・消化管障害リスクが中等度の場合→ナプロキセンとPPI併用

・消化管障害が高リスクの場合→ロキソニンもセレコックスも禁忌

(*消化管障害リスクは「年齢65歳以上」「高用量NSAIDS」「合併症を伴わない消化管潰瘍の既往」「併用薬剤(アスピリン、ステロイド、抗凝固薬)」の4項目のうち該当0なら低リスク、2つ以下で中リスク、3つ以上か合併症を伴わない消化管潰瘍の既往があれば高リスク。と判定する)

 

セレコックスだけでなくロキソニンも軽度心血管イベントを上昇させてしまうので心血管疾患リスクが高い患者ではナプロキセン(ナイキサン®)を 用いる。ナプロキセンはNSAIDSの中で唯一心血管疾患イベントリスクを上昇させない。ただし消化管障害のリスクは高めてしまうのでナプロキセンが万能ということはない。

 

おまけ:セレコックスが心血管疾患イベントリスクを上昇させる理由:

COX2阻害することでプロスタサイクリンの生成が低下し血小板凝集が強くなるからと考えられている。が、心血管疾患イベントを上昇させるのはセレコックスだけでなくロキソニンやジクロフェナクなどでも見られるので注意が必要。繰り返しになるがNSAIDSで心血管疾患イベントを上昇させないのはナプロキセンだけ。