急性期脳梗塞に対するアスピリンとオザグレルの違い
急性期脳梗塞の治療で血栓形成の予防を目的として抗血小板薬が用いられるが、現在有効性が示されているものはアスピリンとオザグレル(キサンボン®、カタクロット®)の2つである。
◯血小板が凝集するメカニズム
血小板は生理的な状態で血管内皮細胞に接着することはないが、アテローム硬化により血管内皮が損傷するとvon Willerand因子を介して血管壁に粘着する。血管壁にくっついた血小板にADP、トロンビン、トロンボキサンなどが結合することにより活性化される。活性化された血小板はアラキドン酸からトロンボキサンを合成分泌して周囲の血小板を更に活性化させる。活性化された血小板は膜状の蛋白GpⅡb/Ⅲaの立体構造を変化させて、フィブリノーゲンやvon willebrand因子を介してお互いに架橋して凝集する。
画像参照:http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/hemophilia/hem_02.html
◯アスピリンはCOXを阻害するのに対して、オザグレルはTXA2を阻害する
アスピリンはシクロオキシゲナーゼ阻害薬であり、活性化された血小板のトロンボキサン合成を抑制する。よって血小板活性化が抑制されるので結果的に血小板の凝集を抑えることができる。一方で、シクロオキシゲナーゼの作用で血管内皮に存在する血小板凝集抑制するプロスタサイクリン(PGI2)も抑制してしまうのである。(下図参照)
これに対して、オザグレルはTXA2を直接阻害するため血小板の合成だけを選択的に阻害することができる。
画像参照(一部改変):https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/cardiology/1901/
◯急性期脳卒中においてどういう使われ方をするか
脳卒中ガイドライン2015によると、
・アスピリン160-300mg/dayの経口投与は発症48時間以内の脳梗塞患者に強く勧められる(グレードA)
・抗血小板薬2剤併用(例えばアスピリンとクロピドグレル)は発症早期の心原性脳梗塞症を除く脳梗塞もしくは一過性脳虚血発作(TIA)患者の亜急性期までの治療法として勧められる(グレードB)
・オザグレルナトリウム160mg/dayの点滴投与は急性期(5日以内に開始)の心原性脳梗塞を除く脳梗塞患者の治療として勧められる(グレードB)
となっている。
また追記します。