TIAのリスク評価:ABCD2スコア
TIA(一過性脳虚血発作)の診断:ABCD2スコア
【TIAとは】
TIAとは脳虚血によって生じる一過性の神経学的異常(麻痺、言語障害、視野障害など)。TIAの症状として失神が連想されることがあるが、頻度としては多くない。
その失神がTIAによるものと診断するには失神に加えて上記の麻痺、構音障害、視野障害など脳幹症状も併発している必要がある。尚、TIAの診断には画像上の脳梗塞の有無は問わない。TIAの症状は24時間以内に症状は消失するが、TIA発症後に1割の患者は脳梗塞を起こし(半数は2日以内)、脳梗塞に準じた検査治療が必要になる。
【TIAの原因】
・塞栓性:頸動脈などの太い血管に出来た血栓が剥がれて飛んで、末梢血管に詰まることで神経症状が出現する。血栓が溶解すればTIAとなる。原因としては最多。→頸部の血管雑音や頸動脈エコーで検査
・血行力学性:元々血管に狭窄があり、脳血流が少ない患者に血圧低下が起こると脳に血液が足りなくなり虚血状態になる。血圧が上昇すれば症状はおさまる。
・心原性塞栓性:心房細動などによりできた血栓が飛んで頸動脈に詰まる場合。普通は脳梗塞になるが、血栓が小さくて速やかに溶けた場合はTIAとなる。 →心電図で検査
【TIAを疑うには】
TIA発症直後は脳梗塞を起こす可能性が非常に高い。TIAだからセーフ、帰宅可能とはならない。次に紹介するABCD2スコアでその後のリスクを計算し、入院加療とするか帰宅させるかを判断する。
【ABCD2スコア】
TIAのリスク評価としてABCD2スコアがある(7点満点)
A(age):年齢 60歳以上で1点
B(blood pressure):血圧 収縮期140以上or拡張期90以上で1点
C(clinical feature):臨床症状 片麻痺で2点、構音障害のみで1点
D(duration):持続期間 60分以上で2点、10-59分で1点、10分未満で0点
D(diabetes):糖尿病 あれば1点
高リスク:6点以上なら2日以内の脳梗塞リスク8.1%
中リスク:4〜5点で4.1%
低リスク:0〜3点で1%
→4点以上は入院の必要あり
【治療方針】
・急性期の再発予防にはアスピリン。
・非心原性TIAの脳梗塞予防には抗血小板療法(アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール、チクロピジン)
・非弁膜症性心房細動などのTIA再発予防には第一選択はワルファリンなどの抗凝固薬
・頸動脈の狭窄による(70%以上)場合は頸動脈内膜剥離術の適応
参考文献:
TIAの急性期治療と脳梗塞発症防止 ( 日本脳卒中学会)
ER実践ハンドブック
UCSFに学ぶできる内科医への近道