感染性腸炎で抗菌薬治療を考える時
感染性下痢症に抗菌薬は必要なのか。
感染性腸炎の原因は大きく分けてウィルス性と細菌性とがある。
抗菌薬は細菌を殺す薬なので当然であるがウィルス性腸炎には効かない。
逆に細菌性の腸炎であれば全例抗菌薬を使っていいのかというとそういうわけでもない。抗菌薬を使うと消化管内の常在菌も皆殺しにしてしまうので腸内細菌叢がリセットされてしまう。よって細菌性腸炎でも重篤化のリスクがある場合や以下に示す特殊な例でのみ抗生剤の使用を考える。
【抗菌薬治療の適応】
・細菌性の腸炎が疑われ重篤感のある場合、高齢者、新生児、DMやHIVなどの免疫力低下患者
・カンピロバクター腸炎(カンピロバクターでは抗菌薬投与で症状が1,3日短縮するとのデータあり)
・サルモネラ感染症で合併症のある場合(50歳以上、3歳以下、免疫不全(AIDS、悪性腫瘍、ステロイド治療)、腎不全、動脈瘤、心臓弁膜症、人工関節など)←逆にサルモネラ合併症を想定しない場合は抗菌薬使わない。
・赤痢
・旅行者下痢症
ちなみに細菌性腸炎は多くの場合大腸型の腸炎を呈する。大腸型というのは大腸で主に細菌が増殖し、腸管粘膜を傷害してしまうために種々の症状が出現する。粘膜破壊によって血便、腹痛、38度以上の発熱が典型的な例である。一方でウィルス型の腸炎では小腸型を呈することが多く、症状としては水様性下痢、嘔吐などが一般的。
参考:感染症999の謎、レジデントノート2015年4月号